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切削加工 2025.02.06

ステンレス切削加工の基礎知識|難しい理由や加工しやすい材料、ポイントを解説

ステンレス切削加工の基礎知識|難しい理由や加工しやすい材料、ポイントを解説

切削加工でステンレス製品の製造を検討していても「ステンレスは切削加工が難しい?」「どんな形状に仕上げられる?」といった疑問を持つ方は多いでしょう。

今回の記事では、ステンレス切削加工の特徴やメリット、加工に使用されるステンレスの種類を解説します。

ステンレス切削加工を成功させるコツも紹介していますので、ぜひ参考にしてください。

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ステンレス切削加工の特徴|加工が難しいって本当?

切削加工

ステンレスは切削加工の難易度が高い、いわゆる「難削材」です。

ステンレスは熱伝導性が低いため、加工時に発生する熱が工具に集中し、工具の先端部分が破損することがあります。

また、ステンレスはほかの金属よりも粘性が高く、加工中に硬さが増す「加工硬化」という現象が起きやすいのも、加工が難しい理由です。長時間切削加工をすると、材料のステンレスが硬化し削りにくくなるほか、工具が破損する原因にもなります。

そのほか、工具とステンレスの親和性が高いことから、切り粉が刃物に溶着しやすいのも難点です。
溶着によってチッピングが発生すると、加工精度が落ちてしまいます。

なお、切削のしやすさを数値化した被削性指数は、ステンレスの種類ごとに異なります。

そのため、切削加工したい内容や用途に応じて、適切なステンレス材料を選ぶことも重要です。

切削加工にステンレスを使うメリット

ステンレスの切削加工は難しいものの、材料にステンレスを採用するメリットは多くあります。

以下では、切削加工にステンレスを使うメリットを見ていきましょう。

耐食性・耐熱性が高い

ステンレスは耐食性の高い素材です。
そのため、長く使い続けられる製品の素材としても向いています。

また、ステンレスは500℃まで高い引張強度を維持できる、高い耐熱性を持っています。

高温環境で使用しても、強度が落ちる心配がありません。

強度が高く、熱伝導性が低い

ステンレスは剛性にすぐれ、高い引張強度があります。

曲げやねじりの力に対して変形を起こしにくいため、強度が必要な箇所の部品や建築資材としても使用可能です。

熱伝導率が低く熱を伝えにくいため、保温性が必要な部材にも適しています。

切削加工に使われるステンレスの種類

ステンレスにはさまざまな種類があり、加工する形状や用途に応じたものを選ぶことが重要です。

切削加工に使用されるステンレスの種類ごとの特徴を解説します。

オーステナイト系ステンレス

オーステナイト系ステンレス鋼は、延性と靭性、溶接性にすぐれたステンレスです。

熱処理によって硬度が高くなるため、自動車部品、原子力発電、理化学装置など、さまざまなシーンで使用されています。

なお、オーステナイト系ステンレスには、以下の種類があります。

  • SUS302
  • SUS303
  • SUS304
  • SUS304L
  • SUS309S
  • SUS310S
  • SUS316
  • SUS317
  • SUS321
  • SUS347

マルテンサイト系ステンレス

マルテンサイト系ステンレスとは、ステンレスの中ではクロム量が13%程度と比較的少なく、炭素量が多いステンレスです。

炭素量が多い分、他の種類より耐食性は劣るものの、硬度と耐摩耗性は高くなっています。

また、焼入れによって硬化するため、熱処理条件を選べば幅広い性質を持たせることも可能です。

なお、マルテンサイト系ステンレスには、以下の種類があります。

  • SUS403
  • SUS410
  • SUS41
  • SUS420
  • SUS420F
  • SUS431
  • SUS440A,B,B
  • SUS440F

フェライト系ステンレス

フェライト系ステンレスとは、マルテンサイト系ステンレス鋼よりも成形加工性と耐食性、溶接性にすぐれたステンレスです。

マルテンサイト系ステンレスとは異なり、焼入れなどの熱処理を行っても硬化しません。

また、極低炭素・窒素のSUS444などの高純度フェライト系ステンレス鋼は、耐食性が強化されており、塩化物環境下での応力腐食割れに強いのも特徴です。

ただし、400℃以上の高温に長時間さらされると、鉄が多い組織とクロムが多い組織への分離が起こり、脆くなるデメリットがあります。

なお、フェライト系ステンレスには、以下の種類があります。

  • SUS405
  • SUS430
  • SUS430F(快削性)
  • SUH446

オーステナイト・フェライト系ステンレス

オーステナイト・フェライト系ステンレスとは、オーステナイト系とフェライト系の中間的な特性を持つステンレスです。

オーステナイトとフェライトそれぞれの金属組織と、メリットをかけ合わせた物理的性質を持っています。強度と耐食性が高く、応力腐食割れに強いのもメリットです。

なお、オーステナイト・フェライト系ステンレスには、以下の種類があります。

  • SUS329J1
  • SUS329J3L
  • SUS329J4L

析出硬化系ステンレス

析出硬化系ステンレスとは、析出硬化を起こして強度を高めたステンレスです。

ただし、原材料が高く製造が難しいため、ステンレスの中でも高価です。

なお、析出硬化系ステンレスには、以下の種類があります。

  • SUS630
  • SUS631
  • SUS660

快削ステンレス

快削ステンレスとは、成分の一部に快削成分を含んで削りやすくしたステンレスです。

例えば、快削ステンレスのひとつであるSUS303は、快削成分であるモリブデン(Mo)を含むことで、SUS304と比較して約2倍の高さの被削性指数を誇ります。

快削ステンレスは切削加工がしやすいものの、含まれている快削成分によってはステンレスそのものの特性が低くなってしまうことがあります。

快削成分によって錆びやすく脆くなるほか、有害不純物である硫黄(S)を含むことで環境条件によっては使用できないなどのデメリットが生じることを覚えておきましょう。

そのほか、複合材料によって異方性が高まり、性質が劣化することもあります。

ステンレス切削加工のポイント

ここからは、ステンレス切削加工のポイントを解説します。

適切な加工機・工具を使用する

ねじれが強く鋭利な刃

ステンレスの切削加工は、材料を選ぶ以外にも適切な工具や加工時の条件設定が重要です。

ステンレスの切削加工は工具の先端に熱がこもりやすく、工具の摩耗も激しくなります。
工具は耐摩耗性を考慮し、コーティング処理をした超硬合金製のものを使うとよいでしょう。

なお、切削加工の方法別の工具選びのポイントは以下の通りです。

  • 旋盤加工:熱を逃がしやすくするために大きめのバイトを使用する
  • フライス加工:ねじれが強く鋭利な刃や、多刃を使用する
  • 穴あけ加工:デュアルリードタイプのドリルを選ぶ 

切削しやすいステンレスを使用する

ステンレスの中には、切削加工がしやすいものもあります。

例えば、フェライト系は被削性がほかのステンレスよりも高く、加工硬化も起こりにくいため切削加工に向いています。

逆に、粘り気が強く加工硬化しやすいオーステナイト系は切削加工には向いていません。

マルテンサイト系は硬くそのままでは切削が難しいものの、焼きなましをすればフェライト系に近い被削性が得られます。

加工の用途や形状に応じたステンレス材料を選びましょう。

切削速度や切削時間に注意する

切削速度が速く、切削時間が短いほうが作業効率は上がります。

ただし、ステンレスで切削速度を速くして切削時間を短くしようとすると、熱がこもって工具が破損する可能性が高いです。
適切な切削速度や切削時間を守りましょう。

必ず切削油(クーラント)を使用する

切削油

ステンレスの切削加工時は、潤滑油として切削油(クーラント)を必ず使用しましょう。

切削油が材料と工具の間に油膜を作り、金属同士の摩耗を軽減してくれます。
これにより加工時に発生する熱を下げることが可能です。

まとめ

ステンレス切削加工の難しさやステンレス材料、加工のポイントを解説しました。

ステンレス切削加工は難易度が高いものの、適切な材料選定や工具、条件設定を行うことで実現可能です。加工精度や品質を高めるためには、高い技術力を持つ適切な加工業者を選びましょう。

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