
ナイロンは、耐衝撃性や高温耐性などの優れた特性を持ち、製品開発や試作に適した素材です。
しかし、「3Dプリント用のナイロンって何?どんな特徴があるの?」と疑問を持つ方も多いでしょう。
そこで本記事では、ナイロンの特徴やメリット・デメリット、使用されるシーンについて詳しく解説します。
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3Dプリント用ナイロンの特徴

3Dプリント用ナイロンの特徴について解説します。
耐衝撃性に優れている
3Dプリント用ナイロンは、熱可塑性樹脂(加熱すると軟化し冷却すると固化する性質を持つプラスチックの一種)の中でも特に優れた耐衝撃性を持ちます。
そのため、工業用製品のパーツや治具など、使用時に衝撃にさらされる物の製造などに最適です。
靭性が高い
3Dプリント用ナイロンは、靭性の高いのも特徴の一つです。
この特性は、曲げや引っ張りが加わる環境での使用に適しており、柔軟性と強度が求められる工業用パーツや機械部品の製造にも向いています。
180度の高温も耐えられる
3Dプリント用ナイロンで作られる造形物は、高い耐熱性を持つのもポイントです。
ナイロンの種類によっては、180℃の高温にも耐える性能を持ち、熱による変形が少なく安定した状態を保つことができます。
耐油性・耐薬品性が高い
3Dプリント用ナイロンは、耐油性と耐薬品性に優れているのも特徴です。
特に、酸に対する強度は綿の100倍ともいわれ、過酷な環境下でも性能を維持することが可能です。
そのため、油や薬品を使用する工場や研究施設での部品製造に適しています。
3Dプリントにナイロンを用いるメリット
3Dプリントにナイロンを用いるメリットを3つ紹介します。
汎用性が高く、試作から製品化までに対応
ナイロンフィラメントは高い汎用性を持ち、試作から最終製品まで幅広い用途に適しているのがメリットです。例えば、試作品の段階では形状の確認だけでなく、耐衝撃性や靭性、耐薬品性といった検証にも役立つでしょう。
また、強度が求められる治具などの製作にも適しており、製造現場でも幅広く活用されています。
耐久性を維持したまま部品を軽量化できる
ナイロンフィラメントは、金属に匹敵する剛性や耐久性を保ちながら、非常に軽量なのも魅力です。
そのため、既存の金属パーツをナイロン製に置き換えることで、製品全体の軽量化が実現できます。
また、軽量化によって製品の取り扱いや設置が容易になるため、作業効率の向上にもつながるでしょう。
製造の効率化が可能
ナイロンフィラメントを用いると、製造プロセスを効率化できるのもメリットの一つです。
ナイロンは、試作段階から最終製品の製造までに必要な耐久性や耐衝撃性を備えているため、設計から製造までの工程を管理しやすく、改良などの微調整にも対応しやすいといえます。
さらに、3Dプリントであれば少量生産も可能で、設計データを少し変更するだけで多品種生産にも対応できます。
3Dプリントにナイロンを用いるデメリット
ナイロンフィラメントは高い強度や耐熱性を持つ優れた素材ですが、吸湿性が高いという課題があります。吸湿によりフィラメントが膨張すると、プリント中に反りや歪みが発生することがあるため注意が必要です。
ナイロンフィラメントを保管・使用する際は湿気対策を行い、乾燥した環境を保つようにしましょう。
3Dプリントにナイロンを使うシーン
3Dプリントにナイロンを使用するのは、主に以下3つのシーンです。
性能テスト用の試作品
ナイロンフィラメントは、性能テスト用の試作品に適した素材です。
ナイロンで作成された試作品は、造形精度チェックだけでなく強度や耐久性、耐衝撃性などの物性試験も行えます。
最終製品に必要な性能を試作品の段階で確認できるため、品質向上につながるでしょう。
最終的な製品製造
ナイロンフィラメントは、最終製品の製造にも適した素材です。
優れた靭性と耐摩耗性を備え、摩擦が多い部品でも安定した性能を発揮します。
特に、自動車業界や航空宇宙産業、軍需産業など、過酷な環境で使用される部品の素材として選ばれることが多いです。
治工具の製造
ナイロンフィラメントは、治工具の製造にも適した素材です。
治工具は、生産工程において部品を固定したり位置を調整したりする重要な役割を果たします。
ナイロンは、高い強度や耐久性、靭性を備えており、治工具の厳しい使用環境にも対応可能です。
3Dプリントに用いられるナイロンの種類
3Dプリントに用いられるナイロンは、主に以下の4種類です。
- ナイロン6
高い靭性と耐衝撃性を持ち、強度が求められる部品に適しています。 - ナイロン66
ナイロン6と比較して耐熱性や剛性が高い点が特徴です。 - ナイロン12
吸湿性が低く、耐薬品性が高いため薬品にさらされる環境でも使用可能です。 - ナイロンカーボン複合材
カーボン繊維を配合したナイロンで、軽量かつ高い剛性を持っています。
同じナイロン素材でも、性能や適した用途が異なるため、製造物に合ったナイロンを使用しましょう。
ナイロン対応の3Dプリンター4選
ここからは、ナイロン対応の3Dプリンターを4つ紹介します。
Markforged X7/FX10

Markforgedシリーズは、DM方式を採用したデスクトップおよびインダストリアルシリーズの3Dプリンターです。
インダストリアルシリーズのX7/FX10では、ナイロンをはじめ様々な素材を用いた高強度で耐衝撃性に優れた部品を試作品だけでなく、治具、溶接固定具、最終製品など幅広い用途に利用できます。
Markforged X7

Markforged FX10

さらに、金属3DプリンターのMetal Xでは、最大密度96%の金属部品を造形可能。純銅を含む多様な材料に対応し、従来の金属3Dプリンターと比較して初期投資を約10分の1に削減できます。
メーカー | Markforged |
価格 | 要問合せ |
Sinterit Lisa X

パウダージェット方式(SLS)の3DプリンターであるSinterit Lisa XとLisa Proは、サポート材なしで設計通りの形状を高速かつ高精度に実現します。
新製品開発や研究プロジェクトにおいて、必要な部品を迅速に手に入れることは非常に重要です。
造形時間が短ければ短いほど、速やかにイメージを確認でき、製品をより早く市場に投入することが可能になります。
Sinterit Lisa XとLisa Proは、主に試作品製作、小ロット生産、研究、教育などの分野で活用されており、国内外の大学・研究機関で豊富な実績があります。
メーカー | Sinterit |
価格 | 要問合せ |
CAracol Heron AM

Heron AM は、最大4m4m×3m サイズの製品を造形できる画期的なロボットアーム式大型ペレット 3D プリンターです。
造形ヘッド、ペレット乾燥装置、平滑化ツール、ソフトウェアなど、造形に必要なものが全て揃っています。
また、ナイロンに加えて、高性能ポリマーから複合材料、リサイクル材料まで、幅広い材料に対応。ペレットから直接造形するため、材料費を大幅に削減可能です。
ペレット材特有の表面のざらつきは、付属のツールで滑らかに仕上げる点も特長。
Heron AM は、環境に配慮した持続可能なモノづくりに貢献します。
メーカー | CAracol |
価格 | 要問合せ |
Creator4S
Creator4Sは、温度調整機能を持つ3Dプリンターで、ナイロンの反りを抑えて高品質な造形が可能です。
自動の水平調整機能など、初めて使う方でも扱いやすい機能がそろっています。
ノズル位置合わせも自動化されており、安定した造形を実現します。
最終製品の製造にも対応可能な高性能モデルです。
メーカー | FLASHFORGE |
価格 | 150万円~ |
Guider3
Guider3は、最新技術を採用したナイロン対応の3Dプリンターです。
精度が高く、複雑な形状や大きな造形もきれいに仕上げられます。
教育や研究、工業や医療分野など、さまざまな業界で活用されています。
メーカー | FLASHFORGE |
価格 | 450,000円(税込495,000円) |
RaisePro3
RaisePro3は、安定した造形が魅力の3Dプリンターです。
また、部品が軽量でメンテナンスが簡単なため、初心者でも使いやすい設計といえます。
細かい設定変更が可能なので、汎用性が高いのもメリットです。
メーカー | Raise3D |
価格 | 問い合わせ |
Fuse 1+
Fuse 1+は、最大12.5m/秒のスキャンスピードを持ち、高速でのプリントが可能な3Dプリンターです。
造形には粉末を使用しており、素材のリサイクルも可能なので、材料ロスを限りなく低く抑えることができます。
ナイロン以外にもさまざまな素材に対応しているため、汎用性が高いプリンターといえるでしょう。
メーカー | Formlabs |
価格 | 問い合わせ |
3Dプリントにナイロンを使用する際の注意点
ナイロンフィラメントは湿気を吸いやすい特性があります。
そのため、保管する際は除湿専用ボックスで保管し、湿度を15%以下に保つことが重要です。
適切な湿気対策を行うことで、高品質な造形を実現できるでしょう。
まとめ
3Dプリント用ナイロンは、耐衝撃性や靭性、耐熱性など優れた特性を持ち、幅広い用途で活用されています。
一方、湿気に弱いため、適切な保管や乾燥が必要です。
また、ナイロンを用いた3Dプリントには、ノウハウや技術が求められることもあります。
そのため、ナイロンを用いて製品を製造したいときは、実績がありさまざまな加工方法に対応している加工業者を選ぶことが大切です。
3Dプリントを活用した部品製造を検討している方は、ぜひ「Taiga(タイガ)」をご活用ください。Taigaは、無料で経験豊富な業者に相談できるサービスです。
難易度の高い部品や新規部品の開発、少量生産、試作から量産まで、コストを抑えつつ効率的に進めることが可能です。
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