
近年、インプラントの製造に用いられる加工方法として切削加工が注目されています。
切削加工でのインプラント製造を検討しているものの「切削加工でインプラント製造に適したものが知りたい」「インプラントの製造に使用する素材が知りたい」といった疑問を持つ方も多いかもしれません。
今回の記事では、インプラントの製造に用いる切削加工について、メリットや切削加工時の注意点について解説します。
切削加工を依頼する業者の選定ポイントについても紹介していますので、ぜひ参考にしてください。
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切削加工はインプラントの製造に適した加工方法
切削加工とは、材料を削って任意の形状に加工する方法で、さまざまな工具や工作機械を使用して加工を行います。
数ある切削加工の中でも、インプラントの製造手法として注目されているのが、医療産業向けCNC機械加工です。
医療産業向けCNC機械加工は、従来よりも高精度の医療器具を短期間かつコストを抑えて製作できる方法として用いられています。
医療用CNC加工でインプラントの製造を行うことで、従来よりも精度を高めた加工が実現可能です。
インプラントの切削加工で用いられる素材

インプラントの切削加工で用いられる素材は、外科インプラント用のチタン素材です。
チタンは強度や耐腐食性、耐熱性が高いことで航空や宇宙分野、化学プラント材料として多く用いられてきました。
また、体が異物として拒否反応を起こしにくい生体適合性が高いことからも、インプラントの材料として多く採用されています。
現在では、外科インプラント用チタン材料として、6種類がJIS規格に定められています。
インプラントの製造に切削加工を用いるメリット
インプラントの製造に切削加工を採用することで、多くのメリットが得られます。
ここからは、インプラントの製造における切削加工の具体的なメリットを順に解説します。
高精度・高品質な仕上げが可能
切削加工では、マシニングセンタやNCフライス盤をはじめとした切削機械とプログラムを使用して加工を行います。
プログラムはミクロンレベルの寸法管理ができ、コンピューターで数値の制御も行います。
複雑な形状でも高精度な寸法を実現できるため、精密な加工が求められるインプラントの製造にも向いています。
納期が早く、低コスト生産が可能
切削加工では、鋳造や鍛造加工などで必要となる金型を製作する必要がありません。
金型製作にかかるコストや時間が発生せず、3D-CADのデータがあれば製作が可能です。
インプラントのように1点ものや同時に製作する数量が少ないものなら、切削加工によって短納期、低コストでの生産も実現できるでしょう。
加工の自由度が高い
切削加工では、複雑な形状でも難なく加工できます。
また、1/1,000のような高精度の加工ができるため、別の部品との嵌合確認するための製作も可能です。寸法精度だけでなく面粗度も調整できる点もメリットです。
そのほか、10ミクロンの公差など人間の目では違いがわからないような極小の管理を行うことも可能です。こうした高度な技術を活かした切削加工は、半導体装置や医療機器、電子部品といった精密さが要求される分野の加工も担っています。
幅広い形状に加工できる
切削加工は機械が加工可能な範囲であれば、材料の厚みに制限を受けません。
機械によっては、工具の順番や加工の工程を入力すると自動加工に対応しているものもあるため、人力では難しい複雑な形状の加工も可能です。
使用する人に合わせた精密な寸法が求められる、インプラントの製造にも適しています。
インプラントの切削加工における注意点
切削加工はインプラントの製造に向いている加工方法であるものの、加工時に注意すべきポイントもあります。
ここでは、インプラントの製造で切削加工を検討するときに覚えておきたい注意点を順に解説します。
切削中に変形しやすく、加工の難易度が高い
チタンは縦弾性係数が少ない特性があるため、切削時に材料が変形しやすく加工しにくい特徴があります。
特に、薄いものを加工する際は変形しやすく、加工精度の低下やびび割れが発生する可能性があるため、注意が必要です。
工具が摩耗しやすい
チタンは熱伝導率が低い特性があるため、切削加工中に工具が過熱しやすい特徴があります。
切削加工で発生した熱が工具と加工する材料に蓄積してしまうと、工具の摩耗が激しくなる点に注意が必要です。
さらに、切削速度が速いほど切削熱が発生しやすく、切削部分の高温化によってさらなる工具の摩耗を招きます。
適切な冷却を行いながら切削加工を行わないと、工具がすぐに劣化してしまう点に注意しましょう。
また、切削加工を継続して行うと切りくずが発生し、刃先が切削抵抗の変動によって欠けたり摩耗したりといったこともあります。
インプラントの切削加工における4つのポイント

インプラントの切削加工は、切削中の変形や工具の摩耗に注意する必要があることがわかりました。
ここからは、インプラント製造の切削加工を成功させるために覚えておくべき4つのポイントを解説します。
低速で切削を行う
高速での切削加工は、熱の蓄積による工具の摩耗や破損の原因となります。
インプラント製造時の切削加工は、可能な限り低速で切削を行うようにしましょう。
冷却液を使用する
冷却液を使用すると、加工中の熱を効率的に抑えられます。
冷却液は工具の摩耗を防ぐためだけでなく、チタンの変形による精度の低下を防ぐことにもつながるため、積極的に使用するようにしましょう。
適切な工具を使用する
チタン製のインプラント製造に適した工具を選定することで、加工精度の向上や工具の摩耗の防止につながります。
たとえば、高性能なコーティングを施した工具や、チタン専用の特殊合金工具などの工具を切削加工に用いるようにしましょう。
加工中の応力を適切に管理する
チタンは送り速度が速いと工具の摩耗と熱の発生の原因につながります。
適切な送り速度を維持するために、加工中の応力を適切に管理して加工を進めるようにしましょう。
インプラントの切削加工を依頼する業者の選び方
インプラントの切削加工を依頼する業者を選ぶ際には、以下のポイントを踏まえておきましょう。
- インプラントの切削加工実績があるか
- 医療機器の品質管理基準を満たしているか
インプラントの切削加工は、前述通りさまざまな注意点を踏まえて加工を行う必要があります。
インプラントの切削加工実績が多くある業者なら、高い技術力を持ってインプラントの切削加工を行ってくれる可能性が高いです。
また、インプラントのような医療機器を製造する場合、製品の安全性を担保するために品質管理基準を満たしている必要があります。
医療機器に特化した国際的な品質マネジメントシステムの規格であるISO13485を取得しているなど、品質管理基準を満たした業者を選ぶようにしましょう。
まとめ
この記事では、インプラント製造の切削加工の概要や切削加工のメリット、注意点、インプラント製造を依頼する業者の選び方を解説しました。
切削加工は高精度かつ、自由な形状の加工を実現できるため、医療機器であるインプラントの製造にも向いている加工方法です。
インプラントの原料であるチタンの特性を理解し、技術が高く医療機器の品質管理基準を満たしている企業を選ぶことで、納得のいくインプラントの切削加工が実現できるでしょう。
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