
3Dプリンターを使うときは、作りたいものに合わせて適切な素材を選ぶ必要があります。
なぜなら、選ぶ素材次第で仕上がりの強度や見た目、耐久性が大きく変わるからです。
この記事では、3Dプリントでよく使われる素材をまとめ、それぞれの特徴やどの造形方式に向いているかを詳しく紹介します。
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3Dプリントに用いる素材とは
3Dプリントでは、紙のプリンターにおけるインクのような素材を使用します。
使用する素材の種類は、3Dプリントの造形方式に応じて、以下のように使い分けられます。
造形方式 | 使用する素材の種類 |
熱溶解積層方式(FDM方式) | フィラメント |
光造形方式(SLA方式・DLP方式)インクジェット方式(材料噴射方式) | レジン |
粉末焼結方式(SLS方式)バインダージェット方式 | 粉末素材 |
素材の特徴を理解し、目的に合った素材を選ぶことが重要です。
3Dプリントで使える素材一覧
3Dプリントで使える素材20個と、それぞれの特徴や性質について解説します。
ABS樹脂
ABS樹脂は、3Dプリントでよく使用される素材です。
耐衝撃性や強度、耐熱性や耐薬品性に優れているため、家電製品や自動車部品の製造に適しています。
ただし、造形中に収縮が起きやすい性質があるため、加熱式ベッドが搭載された3プリンターでの造形がおすすめです。
PLA樹脂
PLA樹脂は、植物由来の原料から作られる環境にやさしい素材です。
低温で成形できるうえ、造形時の臭いも少ないため、初心者にも扱いやすい点が特徴といえます。
ただし、造形後は硬くて脆い性質を持つため、実用品よりも模型や試作品の製作に適しています。
ASA樹脂
ASA樹脂は、耐候性や耐紫外線性に優れた素材です。
屋外で使用される製品や長期にわたり日光にさらされる部品の製造に向いています。
ABS樹脂と似た特性を持ちますが、収縮率が高いため造形には専用の設備が必要です。
PP樹脂

PP樹脂は、軽量で耐薬品性、耐衝撃性が高い素材です。
食品容器や医療機器など、衛生面が重視される用途に適しています。
柔軟性がありながら耐久性も兼ね備えていますが、造形時に変形が起こりやすい点に注意が必要です。
PET樹脂
PET樹脂は、ペットボトルなどに使われるポリエステル系素材です。
強度が高く、耐熱性や耐衝撃性にも優れているため、さまざまな用途で使用されています。
ただし、湿度による影響を受けやすい点に注意が必要です。
また、3Dプリンターで造形するとペットボトルのように透明な造形物は作れないことも覚えておきましょう。
PET樹脂をさらに強化したPETG樹脂も3Dプリントで用いられる素材として有名です。
エポキシ樹脂

エポキシ樹脂は、高い接着力と耐薬品性が求められる用途に適した素材です。硬化後の強度や耐久性が高く、工業製品や修理用パーツに使用されることが多いです。
ただし、硬化に時間がかかる点に注意しましょう。
アクリル樹脂

アクリル樹脂は透明度が高く、加工しやすいのが特徴です。
そのため、看板や照明器具、ディスプレイ製品など、デザイン性が重視される場面で活用されています。
ただし衝撃には弱く、耐久性を求められる用途には向いていません。
シリコーン樹脂
シリコーン樹脂は、柔軟性と耐熱性に優れた素材です。
医療用具や食品用モールドなど、安全性が求められる分野で多く使われています。
耐候性も高く、過酷な環境下で性能を維持できる点も特徴です。
成形時には温度管理が重要ですが、条件を適切に設定することで精密な造形を実現できます。
ポリカーボネート

ポリカーボネートは透明性と耐衝撃性をあわせ持つ素材です。
防護シールドや光学レンズ、スーツケースなどの強度が必要な製品製造に適しています。
ナイロン樹脂
ナイロン樹脂は耐摩耗性と柔軟性に優れているのが特徴です。
軽量で強度も高いため、ギアやベアリングなどの可動部の製造に適しています。
一方で、吸湿性が高いため、保管時には湿度管理に注意が必要です。
TPU樹脂
TPU樹脂は弾力性と柔軟性を持つ素材で、スマホケースや靴底の製造に使われています。
耐衝撃性にも優れているほか、層間接着性も高いため強度のある製品が作れる点が特徴です。
TPE樹脂

TPE樹脂は、ゴムのような柔軟性と伸縮性を持つ素材で、医療用チューブやグリップ部品の製造に適しています。
また、TPUよりも柔らかいため、カッターのグリップなど触感が求められる製品に多く利用されています。
ただし、加工条件が厳しいため、事前にプリンターの調整や温度設定を行うことが重要です。
PS樹脂
PS樹脂は透明性と加工性に優れた素材です。
表面が滑らかで光沢がある仕上がりになるため、建築模型やディスプレイ用品などのデザイン性が求められる用途に適しています。
しかし、割れやすい特性があるため、強度が必要な用途には向いていません。
PU樹脂
PU樹脂は、柔軟性と耐久性を兼ね備えた素材です。
衝撃吸収性も高いため、クッション材や防音材などの製造に適しています
ただし、湿気や温度変化に弱いため、保管する環境に注意しましょう。
ゴムライク
ゴムライクは高い柔軟性と弾性を持つ素材です。ゴム製品のプロトタイプのほか、触感が求められるグリップ部品の製造などに用いられています。
一方で経年劣化しやすく、耐久性を求められる製品には向かない点に注意が必要です。
チタン合金
チタン合金は、軽量かつ高強度で耐食性にも優れた高性能素材です。
医療用インプラントや航空部品、自動車の高性能パーツなど、精密性が求められる分野で多く使われています。
耐熱性や耐久性にも優れており、過酷な環境でも安定した性能を発揮します。
アルミニウム合金

アルミニウム合金は、軽量で加工が容易なうえ、耐食性が高い性質を持つ素材です。
熱伝導性が高く、プリント時には適切な温度管理が必要なものの、加工精度が高く複雑な形状も造形できます。
熱変形を防ぐための設計や工夫が求められますが、その汎用性の高さから、多くの産業分野で利用されています。
ステンレス

ステンレスは、優れた耐久性と耐食性を備えた素材です。
錆びにくい特性から、医療器具や調理器具などの衛生面が求められる環境で使用されるものの造形に用いられています。
ただし、チタンなどと比べると重量があるため、大型製品や軽量化が求められる用途には不向きといえます。
石膏

石膏は、細部まで精密に表現できる特性を持つ素材で、建築模型やアート作品に使われています。
脆くて衝撃に弱い性質があり、耐久性を求められる製品には不向きではあるものの、美しい仕上がりが期待できるでしょう。
3Dプリントに使う素材の選び方
3Dプリントに使う素材の選び方を解説します。
3Dプリントの造形方式に合わせて選ぶ
3Dプリントに使用できる素材は、造形方法によって異なります。
下記の表は、各造形方式で使用される素材の種類と素材価格相場をまとめたものです。
造形方式 | 素材の種類 | 素材の価格相場(1kgあたり) |
熱溶解積層方式 | PLA樹脂、ABS樹脂、ASA樹脂、PP樹脂、TPU、PETG、ナイロン樹脂 、PC樹脂 | 2,000円~10万円前後 |
光造形方式 | エポキシ系樹脂、アクリル樹脂、レジン、ゴムライク | 2,000円~4万円前後 |
インクジェット方式 | レジン、ワックス、ゴムライク、石膏 | 約6万円~ |
粉末焼結方式 | PP樹脂、ナイロン樹脂、金属 | 約1万円〜 |
3Dプリンターの造形方式を確認するほか、予算に合わせてどの素材を使うかを検討しましょう。
作りたいものに合わせて選ぶ
3Dプリントに使う素材は、それぞれ特徴が異なるため、作りたいものに応じた選択が必要です。
素材の特徴を把握したうえで、作りたいものに必要な機能や環境を考慮して素材を決定しましょう。
3Dプリンターの純正品から選ぶ
純正品の素材は、プリンターとの相性が最適化されており、安定した造形やトラブルの防止につながります。
特に、一部のメーカーでは純正品以外の素材が使用できない仕様になっていることもあるため注意が必要です。
3Dプリントにはサポート材も必要

3Dプリントには、実際に造形物を形作る素材だけでなく、造形時のサポート材も必要になります。
サポート材とは、3DプリンターでT字やH字、円形のように宙に浮く部分がある造形物を作る際に支えとして使われる素材です。
まとめ
3Dプリントに使える素材は多岐にわたり、それぞれ異なる特徴を持ちます。
選ぶ素材によって造形物の強度や見た目、耐久性が大きく変わるため、目的に応じた適切な素材選びが重要です。造形方式や作りたいものに合わせて素材を選び、必要であればメーカー純正品や専用のサポート材を活用することで、高品質な仕上がりが期待できるでしょう。
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