
アルミは金属の中でも加工しやすく、切削加工の材料としても多く用いられています。
ただし、切削加工での品質を保つためには、アルミの特性や加工時の注意点を把握しなければいけません。
今回の記事では、切削加工にアルミが向いている理由に加えて、アルミの切削加工の方法や注意点、成功させるためのポイントを解説します。
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切削加工にアルミを使う6つのメリット
アルミはさまざまな理由から、切削加工の材料としても多く用いられています。以下では、切削加工の材料にアルミを選ぶ6つのメリットを見ていきましょう。
アルミは切削加工に向いている素材

アルミは金属の中でも切削加工との相性が良く、ほかの金属と比較すると加工しやすい素材といえます。
金属の切削のしにくさを表す指標である「被削性指数率」を、アルミとほかの金属で比べてみましょう。
- アルミ:240~140
- 銅合金:100~70
- 鋼:85~50
- 鋳鉄:90~50
*値が多いほど削りやすい
また、アルミは融点が低く溶かしやすいため、鋳造や接合といった加工にも向いています。切削加工とほかの加工方法を組み合わせることで、さまざまな形状へ加工できるでしょう。
強度が高く、軽量化に向いている
アルミは元々強度の高い金属です。
また、マグネシウムやマンガンなどのほかの金属と混ぜて合金化する、または熱処理を施すことで、さらに強度を高められます。
加えて、アルミ自体が軽いため取り扱いがしやすく、製品の軽量化にも有効です。例えば鉄や銅と比較すると、アルミは約3分の1の重さしかありません。
流通量が多く、コストパフォーマンスに優れている
アルミは流通量が多く、金属の中でも安価で手に入る素材です。
また、加工性も高いため加工費用を抑えやすく、コストパフォーマンスに優れた素材といえるでしょう。
腐食やサビに強く、毒性がほとんどない

アルミは空気中で表面に酸化皮膜を作る特性があるため、腐食やサビにも強い特徴があります。
そのため、屋外で使用される自動車や船舶、建築物などの素材にも向いているでしょう。
また、アルミニウムは無臭で毒性がほとんどなく、人体への悪影響も起こりにくい金属です。
そのため、食品や医薬品の包装、飲料缶、医療機器、家庭用器などさまざまな用途で使用されています。
ただし、A2000番台のアルミニウムは強度向上のために銅(Cu)が多く含まれています。
銅は酸化しやすい性質があるため、耐食性を向上させるためにはアルマイト処理による表面処理が必要です。
非磁性体の導電体として使用できる
アルミは磁気を持たないため、精密機械などの部品の素材としても向いています。
アルミの電気伝導率は銅の約60%程度ですが、比重が銅の約3分の1のため、同じ重さの銅と比べて約2倍の電流を通せるのがメリットです。
そのため、電線などの導電体としても使用できます。
熱伝導率や反射性に優れている
銅や銀には劣るものの、アルミは熱を伝えやすい性質もあります。アルミの熱伝導率は真鍮の約2倍、鉄やステンレスの約3倍です。熱しやすく冷めやすい性質を活かして、幅広い製品に活用できます。
また、鏡面研磨されたアルミは、ほかの金属よりも高い反射率を誇ります。
アルミの純度が高ければ高いほど、反射率も高くなります。
赤外線や紫外線、電磁波、各種熱線を反射できるため、暖房器具、照明器具の反射板として使用されるケースが多いです。
さらに、反射率が高いということは加工後の表面の仕上がりが美しいともいえます。
アルミ切削加工の特徴|アルミ加工は難しい?
アルミは切削加工に向いているものの、アルミの性質や特徴を理解していないと加工がうまく進まないことがあります。
アルミはほかの金属と比較すると溶融点が660℃と低いため、切削加工時に発生する摩擦で材料が溶けてしまい、刃先に着いて固まることがあります。
工具のすくい面や刃先にアルミが付着して固まると、加工面がギザギザになるなど加工の精度が大きく低下してしまうので注意が必要です。
また、熱伝導性が高いことで、熱を加えたときに歪みやすい点にも気を付ける必要があります。そのほか、アルミはほかの金属よりも伸びやすいのも特徴です。
切削加工時はアルミが伸びると、バリが発生しやすくなります。バリが発生すると製品の品質低下の原因になるほか、切削加工後の後工程でバリ取りの手間が発生してしまいます。
このように、アルミの切削加工は決して簡単ではありません。
さまざまな点に注意して、満足のいく加工品に仕上げるためにも適切な加工業者を選ぶ必要があるでしょう。
切削加工で使われるアルミニウムの種類|切削しやすいのはどれ?
アルミニウムにはさまざまな種類があるため、それぞれの特性を知って素材を選ぶことが重要です。
以下では、切削加工で使われるアルミニウムの種類ごとの特徴を解説します。
1000番系
1000番系は、純度99%以上の純アルミニウムです。
純度が高いため導電性や熱伝導性が高く、加工性もすぐれています。
一方、アルミニウム合金と比べると強度は劣ります。
2000番系
2000番系は、銅(Cu)を含有するアルミニウム合金です。
強度が高く切削性にもすぐれている一方、銅は酸化しやすいため耐食性は高くありません。
一般的にアルマイト処理を行って、耐食性を向上させてから使います。
3000番系
3000番系は、マンガン(Mn)を含有するアルミニウム合金です。純アルミニウムの持つ耐食性を維持したまま、強度を向上させています。
成形性の良さを活かしてアルミ缶や建材などに多く採用されるものの、切削加工材料にはあまり使われません。
4000番系
4000番系は、熱に強いシリコン(Si)を添加したことで、耐熱性や耐摩耗性を向上させたアルミ合金です。
熱膨張率も低く抑えられているため、鍛造ピストンなどの素材としても使われていますが、切削加工の材料として使われることはあまりありません。
5000番系
5000番系は、マグネシウム(Mg)を含有するアルミニウム合金です。
マグネシウムによって耐食性と強度が向上しており、被削性にもすぐれているため、切削加工材料として多く使われています。
6000番系
6000番系は、シリコンとマグネシウムを含有したアルミニウム合金です。
5000番系よりも強度・耐食性が向上しているのが特徴です。中には、銅を添加して強度を鉄鋼のSS材(一般構造用圧延鋼材)程度まで向上させたものもあります。
7000番系
7000番系は、亜鉛(Zn)とマグネシウムを含有したアルミニウム合金です。
銅を添加したA7075は超々ジュラルミンと呼ばれ、アルミ合金でもっとも高い強度を誇ります。
アルミの切削加工における注意点
アルミは加工性が高い金属であるものの、加工品の形状やアルミの種類によっては、加工中に切削工具へ溶着する可能性がある点に注意が必要です。
溶着は構成刃先の原因となるため、防ぐために対策しなければなりません。
また、アルミ合金は金属素材の中では線膨張係数が高く、熱によって膨張しやすいのも特徴です。
そのため、切削加工時の熱によって寸法が変わってしまうことがあります。
薄い形状の切削加工を行うと、加工時の熱や残留応力により歪みや反りなどの変形が起こることがあるでしょう。
このように、アルミの切削加工では、さまざまな点に注意する必要があるのです。
アルミ切削加工を成功させる4つのコツ
以下では、アルミの切削加工を成功させるためのコツを4つ紹介します。
高速で切削加工を行う
切削速度を速くして作業することで、部材の溶着が少なくなります。
また、切削抵抗が下がり、切削面も滑らかになります。
切削抵抗の少ないシャープな刃を使用する

アルミの切削加工には、シャープな形状の工具を使いましょう。
シャープな刃先は切削抵抗が少ないため、削った表面が滑らかになります。
切り粉をこまめに取り除く

加工中は、表面傷や溶着の原因となる切り粉をこまめに取り除きましょう。
特に、切削加工で穴を作る場合、穴の中に切り粉がたまりやすいので、一回の切込み量を調整し、こまめに除去しましょう。
切削油(クーラント)を使用する

比重の軽いアルミの切り粉は、切削油に浮きやすく溶着のリスクを減少できます。
切り粉の切削工具への溶着を防ぐうえでも、切削油を使うことが大切です。
まとめ
アルミ切削加工の概要や材料、加工方法や注意点について解説しました。
アルミは切削加工がしやすい素材である一方で、材料に合わせた加工や溶着を防ぐための工夫も必要です。
高い品質のアルミ製品製造を実現するために、適切な加工業者を選びましょう。
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