
アルミは軽量で強度が高い素材のため、さまざまな製品製造に用いられています。
しかし、アルミはその特性上、板金加工が難しい金属でもあります。
そのため、アルミの特徴を踏まえて、適切な方法や手順で加工を行うことが重要です。
今回の記事では、アルミの板金加工の特徴や方法、手順について解説します。
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板金加工に用いられるアルミの特徴

アルミには、以下のような特徴があります。
- 他の金属よりも軽い
- 強度が高い
- ほかの金属を添加すればより強度が高くなる
- 錆や腐食が発生しにくい
- 表面処理(アルマイト処理)によりさらに腐食性が高くなる
- 柔軟性が高く融点が低いため、加工性が高い
- 熱・電気の伝統性にすぐれている
アルミの持つ軽さと強度は、さまざまな製品の軽量化を実現させています。
特に自動車業界では、製品の軽量化や環境問題への取り組みとして、部品を鉄からアルミに切り替えての製品開発が促進されています。
その他の産業機器分野でも、鉄からアルミへの部品乗り換えが予測されるでしょう。
ほかにも、以下のようなさまざまな製品にアルミが活用されています。
- 機械・電子部品のカバーやフレーム
- 家具(オフィスデスク、テーブル、収納ラックなど)
- 住宅設備(流し台、サッシ、郵便受けなど)
- 乗り物(飛行機、新幹線など)の部品
板金加工に用いられるアルミの種類
アルミには、大きく分けて「純アルミニウム」と「合金アルミニウム」があります。
純アルミニウムとは、純度99.9%のアルミのことです。
一方で、合金アルミニウムはアルミにほかの金属を添加したアルミのことを指します。
アルミニウムは添加した金属によって、「A○○系」と表記・分類されます。
アルミの種類ごとの添加物や特徴を以下の一覧にまとめましたので、参考にしてください。
アルミの種類 | 添加 | 特徴 |
A1000系 | なし | ・加工性が高い・強度が低い |
A2000系 | 銅とマグネシウム | ・A2017とA2024は「ジュラルミン」や「超ジュラルミン」とも呼ばれる・鉄鋼に並ぶほど強度が高い・耐食性がやや低い |
A3000系 | マンガン | ・アルミ缶の材料として使われている・強度が高い・耐食性が高い |
A4000系 | シリコン | 耐熱耐性と耐磨耗性が向上 |
A5000系 | マグネシウム | ・耐食性が高い・加工性にすぐれる・強度が高い |
A6000系 | マグネシウムとシリコン | ・強度が高い・耐食性が高い・接合部品(ボルトやナットなど)、船舶や車両などの材料に使用されている |
アルミの板金加工が難しいと言われる3つの理由
アルミは板金加工が難しい金属のひとつです。
ここからは、アルミの板金加工が難しい理由を順に解説します。
柔らかい素材のため、傷や凹みができやすい
アルミはほかの金属より柔らかい特徴を持っています。
以下では、金属の硬さの尺度である「ブリネル硬さ(単位:HB)」について、アルミとほかの金属で比較してみましょう。
- アルミ:15HB
- 銅:35HB
- 鉄:112HB
- ステンレス(鉄+クロム+ニッケル):1250HB
ブリネル硬さは、数値が低いほど柔らかく、高いほど硬いことになります。
数値を見ると、ほかの金属と比べてアルミがどれだけ柔らかいかがわかるでしょう。
金属の中でも柔らかいアルミは傷や凹みが付きやすいため、加工時はもちろん、移動時や運搬時、保管時も十分取り扱いに注意しなければいけません。
溶接加工が難しい
アルミは、ほかの金属よりも融点が低いのも特徴です。
- アルミニウム:660 ℃
- 銅:1084.5 ℃
- 鉄:1536 ℃
- ステンレス(鉄+クロム+ニッケル):1400~1500℃
融点が低いと、溶接によってアルミそのものが解けてしまうため、加工が難しくなります。
また、熱伝導性も高いため、加工時に熱変形が起きたり、溶加材がうまく溶けなかったりすることもあります。
アルミを溶接加工する際には、以下のような技術が求められるでしょう。
- アルミへの入熱管理
- 溶接時間の短縮
- 工場内の環境作り
アルミの融点の低さや熱伝導性の高さは、鋳造加工には向いているものの溶接加工には不向きといえます。
強度が低く、破損しやすい
アルミはほかの金属と比較すると、強度が低く衝撃に弱い特徴を持っています。
アルミを落下させたり、ぶつけたりしてしまうと、傷が付いたり、破損したりしてしまうことも多いです。加工や取り扱い時には気を付ける必要があります。
ただし、アルミはほかの金属を添加することで強度を上げることが可能です。
アルミは他元素と結びつきやすい性質があるので、さまざまな種類の合金アルミニウムが存在します。
例えば、アルミニウムに銅やマグネシウムを添加したA2000系アルミニウムの中には、「ジェラルミン」があります。
ジェラルミンは変形に強く難燃性も高いため、精密機器や現金の輸送に活用される、ジェラルミンケースの素材として活用されています。
同じくA2000系アルミニウムの「超ジェラルミン」は、工業製品などに活用されている金属です。
アルミ板金の加工方法
アルミ板金の主な加工方法は、以下の通りです。
- 曲げ加工
- 切断加工
- 穴あけ加工
一般的に曲げ加工が多く用いられますが、加工品の形状や目的に応じて、ほかの加工方法も使用されています。
それぞれの加工方法の特徴を解説します。
曲げ加工
曲げ加工とは、アルミ板金をさまざまな形に曲げることで加工する方法です。
加工方法により、「ロール曲げ」と「ベンダー曲げ(プレス曲げ)」があります。
ロール曲げ

ロール曲げ加工とは、アルミ板金を専用の機械に通して曲げる加工方法です。
円形筒状の加工物を製作するのに用いられます。
ロールの直径を変えれば、曲げの径を変えることができます。
ただし、経が小さいとクラックが発生しやすくなる点に注意が必要です。
ベンダー曲げ(プレス曲げ)
ベンダー曲げ(プレス曲げ)とは、金型とパンチの間にアルミ板材を置き、挟み込むことで曲げる加工方法です。
V曲げ、L曲げ、Z曲げなど、幅広い形に加工できます。
ベンダー曲げは生産速度が早いため、大量生産にも対応できるのがメリットです。
ただし、圧力計算や最適な金型の選定といったノウハウが求められるケースもあります。
切断加工
切断加工は、アルミ板金を工具で切断する加工方法です。
アルミの切断加工には、主に以下の工具が用いられます。
- プラスチックカッター
- ディスクグラインダー
- 電動ジグソー
アルミは軽くて柔らかい性質があるため、ほかの金属と比べて簡単に切断できます。
ただし、カットした断面は鋭利なので注意が必要です。
また、合金アルミは強度が高いため、安全かつ適切な切断加工を行うためには、アルミの種類に応じた工具を選ばなければいけません。
穴あけ加工

穴あけ加工とは、アルミ板金に穴をあける加工方法のことです。
加工には、以下の工具が用いられます。
- 電動ドリル
- センターポンチ
- 金槌
穴あけ加工の際は、バリの発生や刃に切りくずが溶着することがあります。
ドリルの回転数を速くするなどで溶着を防ぐ必要があるでしょう。
アルミ板金の加工手順
アルミ板金の加工手順は以下の通りです。
- 加工物の設計をする
- 加工するアルミ板金を調達する
- 機械によって加工する(切断・穴あけ・曲げいずれか)
- 加工物を組み合わせて溶接する
- バリ取りなどの仕上げを行う
- アッセンブリ(組み立て)を行う
- 完成品を倉庫保管する
- 必要に応じて出荷、納品する
加工手順のすべての工程を依頼できるかどうかは、アルミ板金の加工業者によって異なります。
アルミ板金の加工は行うものの、アッセンブリは他社に依頼するところもあれば、加工からアッセンブリ、倉庫保管と納品までをすべて依頼できるところもあります。
加工業者を選ぶ際は、どの工程まで依頼できるかをよく確認しましょう。
まとめ
本記事では、アルミの板金加工が難しい理由とともに、アルミの種類ごとの特徴、加工方法と手順を解説しました。
アルミは日用品から工業用部品まで、幅広い製品の素材として採用されています。
アルミの板金加工は難しく、高い技術が必要です。
加工を依頼する際は、アルミの種類や制作物に応じて適切な加工方法を提案してくれる業者を選びましょう。
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