
航空機産業において、CFRP(炭素繊維強化プラスチック)の採用が急速に進んでいます。
最新の航空機では、機体構造重量の50%以上がCFRPで製造されているため、航空機の性能や設計に大きな影響を与える材料です。
この記事では、航空機におけるCFRP活用の全体像について解説します。
軽さや優れた耐食性といったCFRPならではの特長、そして製造コストや加工技術といった実用化における課題までまとめているので、ぜひ最後までお読みください。
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CFRPが航空機で利用されている部分

CFRPが航空機で利用されている部分は以下の3つです。
部品 | 用途 | 特徴・メリット |
一次構造材 | 主翼、胴体、尾翼 | 高強度、軽量化、耐荷重性能向上 |
二次構造材 | 補助翼、方向舵、昇降舵、フェアリング | 軽量化、性能向上、燃料効率向上 |
内装材 | 座席、壁面、天井パネル | 軽量化、デザイン自由度向上、快適性向上 |
一次構造材

CFRPは航空機の一次構造材として利用されています。航空機の一次構造材とは、機体全体を支える、最も重要な構造部分を指します。
一次構造材の中でもCFRPが利用されているのは、主翼や胴体、尾翼です。CFRPは、非常に高い強度を持っているため、一次構造材として使うことで、耐荷重性能の向上を実現します。
従来の金属(アルミニウムやチタンなど)に比べて軽量である一方、同等もしくはそれ以上の強度を発揮するため、特に負荷がかかる部分でも十分な耐久性を確保できます。
ニ次構造材

CFRPは、補助翼や方向舵、昇降舵、フェアリングなどのニ次構造材としても利用されます。
ニ次構造材とは、機体全体の形状を補完したり、内部の機能をサポートしたりする部分です。
二次構造材は、一次構造材ほど直接的な荷重を受けないため、耐久性の面だけではなく、特に機体全体の軽量化や全体的な性能向上に役立っています。
その結果、燃料効率の向上や運航コストの削減にもつながります。
内装材

CFRPは航空機の内装材として、座席や壁面、天井パネルなどに使用されます。
設計の柔軟性が高いCFRPを内装材として利用することで、機内の快適性を高めるためのデザインが可能になり、乗客にとってより快適な空間を提供できます。
また、航空機の内装が軽量化されることで、燃費の向上が期待できることも特徴の1つです。
このように、CFRPは航空機の構造材としてだけでなく、内装材としても重要な役割を果たしており、航空機の性能や快適性を向上させるために欠かせない材料となっていることがわかります。
CFRPが航空機で使われる理由
CFRPは、その優れた性能から航空機における主要な素材として広く採用されています。この章では、CFRPが航空機で使われる具体的な理由について詳しく解説します。
- 軽量性
- 強固
- 耐食性
- 設計の柔軟性
それぞれ解説していくのでぜひ参考にしてみてください。
軽量性
CFRPが航空機で使われる理由の一つは、「軽量性」に優れているためです。
CFRPは、金属に比べると非常に軽量で、アルミ合金の約60%の軽さといわれています。この軽さによって、航空機の燃費を向上させ、航続距離を延ばすことも可能です。
実際に、ボーイング787では、CFRPは機体全体の3%程度のみの利用でしたが、50%にまで拡大させたことで、機体の重量が約60トンから48トンへと20%もの軽量化が実現したと言います。
強固
CFRPは、軽量でありながら非常に高い強度を持っていることも、航空機で使われる理由の一つです。
CFRPの主成分である炭素繊維は、非常に細い繊維状の構造を持っており、炭素繊維は鉄の10倍強いともいわれています。そのため、外部からの衝撃に対する耐性の向上を期待でき、航空機のさまざまな部分で使われています。
また、機体の長寿命化によりコストを低減できることもメリットです。
耐食性
CFRPは金属に比べて腐食しにくいことも、航空機で使われる理由の一つです。
CFRPは水や塩分による腐食がなく、湿気の多い環境でも劣化しにくい特徴があります。そのため、金属よりも長い期間安全に運航できます。
また、メンテナンスの頻度を減らせることで、運用コストの削減が期待できることもCFRPを利用するメリットです。
設計の柔軟性
CFRPは、炭素繊維と樹脂が組み合わさっている複合材料のため、成形の自由度が非常に高いという特徴を持っています。そのため、航空機の複雑な形状を持つ部品を製造するのに適しています。
CFRPを使用することで、設計者はより効率的に自由な曲面をデザインすることができます。
航空機でCFRPを利用する際の注意点
航空機でCFRPを利用する際の注意点は以下の4つです。
- 価格が高い
- 加工が難しい
- CFRP成形メーカーが限定される
- CFRPリサイクルがしにくい
価格が高い
CFRPの材料である炭素繊維は、金属と比べると高価なものです。そのため、CFRPの価格は高くなります。
また、製造コストがかかることも、CFRPの価格が高くなる原因の一つです。
CFRPを加工するには、高額な専用設備が必要となり、材料の保管にも費用がかかるため、成形コストが高くなります。
炭素繊維の需要が高まりつつあるため、大量生産によってコスト削減をする動きがあるようですが、他の金属より、価格が下がることは考えにくいでしょう。
加工が難しい
CFRPの材料である炭素繊維は、方向によって強度や弾性が異なるため、加工が難しくなります。
また、炭素繊維そのものが非常に硬く、切削工具が摩耗しやすいことも加工を難しくしている原因です。
上記のような特徴があると、加工中に割れたり、欠けたりする恐れがあります。そのため、CFRPを加工するには、高度な技術が必要となります。
「cfrp加工 難しい」(内部リンク)
「cfrp 成形方法」(内部リンク)
CFRP成形メーカーが限定される
CFRPは加工が難しいこともあり、成形メーカーが限定されてしまいます。そのため、どの企業に委託すれば良いのかわからないという問題も発生します。
メーカーによってできること、できないことがあるため、各企業のホームページを確認し、どんな強みがあるのかを確認することが重要です。
弊社Taigaでは、複雑形状部品や新規部品などの製造・開発に最適な設計と製造方法をご提案します。
CFRPリサイクルがしにくい
CFRPはリサイクルがしにくい点にも注意が必要です。
CFRPを成形するために使用される樹脂は、一度硬化すると分子構造が化学的に固定されるため、再加熱して再利用できません。
金属の場合は、溶解して再利用できますが、樹脂は元の形状や性質に戻すことが難しいため、リサイクルに手間がかかります。
また、炭素繊維と樹脂が一体化した複合材料のため、リサイクルする際には分離する工程が必要ですが、この分離作業が非常に難しいこともリサイクルがしにくい要因です。
まとめ
この記事では、CFRPが航空機で利用されている部分やCFRPが航空機で使われる理由、航空機でCFRPを利用する際の注意点について解説してきました。
CFRPは、金属よりも性能が優れている部分が多いため、航空機のさまざまな部分で使用されています。
金属よりも軽い上に耐久性も優れており、劣化しにくい特徴があります。また、成形の自由度が非常に高いことも特徴です。
一方で、加工が難しいことや価格が高いなどのデメリットもあるため注意しましょう。
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