
寸法安定性にすぐれた合成金属であるインバーは、制御機器などの寸法精度が必要となる用途で多く活用されています。
インバーを使った製品の試作品製作や、特殊な形状の製作を検討しているとき、選択肢となるのが金属3Dプリントです。
一方で「インバーの金属3Dプリントに対応している業者はいる?」「インバーでどんな製品が作れる?」といった疑問を持つ方もいるかもしれません。
今回の記事では、インバーの金属としての特徴やメリット、デメリットとともにインバーを3Dプリントするときのメリットや注意点について解説します。
Taigaで技術提案を受ける目次
インバーとは?3Dプリンターでの造形は可能?
インバーとは、鉄やニッケル、マンガンやコバルト、炭素などを含む合成金属です。
温度上昇時の熱膨張と、強磁性から常磁性へ転換するときに発生する体積収縮を同時に行う性質から、-250から200°Cの温度範囲内で寸法がほとんど変わらない、高い寸法安定性を誇ります。
インバー製品は、これまで圧延による棒材や板材、または鋳造による製作が一般的でしたが、近年は3Dプリントも注目されています。
インバーの3Dプリントはまだ一般的ではないため、対応している業者自体は全体から見れば少ないものの、近年3Dプリントを踏まえたインバー材の開発や研究も進められています。
インバーの主な種類
インバーの種類ごとの特徴は、以下の通りです。
種類 | 特徴 |
インバー36 | 標準的なインバー一定温度内での寸法安定性が高い |
スーパーインバー | インバーにコバルトを4~5%添加した合金熱膨張率は鉄の100分の1と、さらに低くなっている3Dプリントでの積層造形開発が進められている |
高強度インバー | チタンなどを添加し、強度を高めたインバー |
耐食性インバー | クロムやステンレスなどを添加し、耐食性を高めたインバー |
インバー材のメリット
インバー材には、以下のようなメリットがあります。
- 特定温度での寸法安定性が高い
- 比較的耐食性が高い
- 強磁性合金のためキュリー点(276.7℃)以下で強い磁性
- 金属のすぐれた特性を持つ
- コストパフォーマンスが良い
インバーは、-250から200°Cの温度範囲内なら寸法がほとんど変わりません。
そのため、厳しい寸法精度が求められるさまざまな用途に活用されています。
また、ニッケルを含むため、比較的耐食性は高めです。

電気伝導性や溶接性、弾性など、金属が持つすぐれた性質も保持しています。
低膨張性のある他の金属よりも安価で手に入るため、コストパフォーマンスも良いといえるでしょう。
インバー材のデメリット
インバー材には、以下のようなデメリットもあります。
- 温度外では寸法安定性が損なわれる
- 高温で耐酸化性が下がる
- 多湿環境では錆が発生することがある
- 酸やアルカリに弱い
インバー材は限られた範囲での寸法安定性は担保できますが、温度外では変形が生じます。
また、高温下では寸法は保持できるものの、耐酸化性が低下する点に注意が必要です。
そのほか、乾燥状態では耐食性が発揮できるものの、多湿環境下では錆が発生することがあります。
酸やアルカリに弱いため、耐薬品性は高いとはいえません。
インバーの主な用途や製品例
温度変化に強いインバーの持つ性質によって、以下のような用途や製品に活用されています。

- 精密機器
- 時計の部品
- 測量機器(基準尺や基準線)
- 光学機器(フレームやレンズホルダー)
- 電子機器
- 半導体製造装置(ステージやフレーム)
- LNGタンカー(タンク)
- 航空宇宙(航空機やロケット、人工衛星の部品)
- 自動車・輸送機器(エンジン部品やブレーキ部品)
- 医療機器
- 建築材料
インバーを3Dプリントで加工するメリット
インバーを3Dプリントで加工することで得られるメリットを解説します。
難削材のインバー材は3Dプリントとの相性が良い
インバーは難削材のため、切削加工での加工は難しいとされています。
そして、インバーは精密機器の用途で多く用いられるため、高精度で加工できる切削加工ができない点がネックとなっていました。
しかし近年、インバーにも対応できる金属3Dプリンターや3Dプリントを前提としたインバー材の研究開発が進んだことで、3Dプリントによる加工も普及しはじめています。

積層によって造形を行う3Dプリントなら、難削材であるインバーでも高い精度を保って加工が可能です。
形状の自由度が高くさまざまな形に造形できる
金属3Dプリンターは、CADソフトで作成したデータをもとに、材料を積層して造形を行います。
データに忠実な造形が可能なため、複雑な形状や高い寸法精度が求められる加工にも向いています。
部品数が少なく済むため、効率的な造形が可能
金属3Dプリンターは、CADデータに沿って自由な形状での造形ができます。
そのため、従来の加工方法のように、部品をひとつずつ作って接着して完成品にする、といった工程は必要ありません。
一度の加工で完成品や試作品が作れるので、製造工程の効率化にもつながるでしょう。
試作品の造形や小ロット生産に向いている
金属3Dプリントでは、一般的な金属加工方法で必要となる金型は不要です。
そのため、金型の製作で発生する期間やコストなども削減できます。
インバーを使った試作品や小ロットの生産も、3Dプリントなら短納期、コストを抑えて実現できるでしょう。
インバーは低膨張性を持つ合成金属の中ではコストパフォーマンスは良いものの、素材としては決して安価ではありません。
インバーの材料費を無駄にすることなく、試作品や小ロット生産ができる面でも3Dプリントのメリットは大きいといえます。
インバーの3Dプリントを依頼する業者の選び方
インバーの3Dプリントに対応している業者は比較的少なく、納得の造形を実現するには信頼できる業者を選ぶ必要があります。
インバーの3Dプリントを依頼する際の業者の選び方を解説します。
インバー材の3Dプリントに対応しているか
インバー材の3Dプリントはまだ一般的ではないため、対応している業者はごく少数となります。
インバーを使った部品や製品製作を実現するために、インバーに対応した3Dプリントを行っている業者を選びましょう。
また、公式サイトで加工実績を確認しておくと安心です。
インバー材以外の金属素材も検討できるか
業者によって、3Dプリントができる部材の種類が異なります。
インバー材以外の幅広い金属素材に対応していれば、その分加工できる製品や部材の選択肢の幅も広がります。
また、用途やコストによってはインバー材以外の材料が選択肢となることもあるため、いろいろな提案を受けられるのもメリットです。
造形にかかる費用や納期はどれくらいか
造形で発生する費用や納期は、業者によって異なります。
必ず希望に沿った費用や納期が実現できる業者を選びましょう。
二次加工が可能か
3Dプリントでは、造形する部品や製品によっては表面処理や研磨などの二次加工が必要です。
業者によって、3Dプリントのみに対応しているか、後処理や二次加工にも対応しているかは異なります。
後処理や二次加工に対応している場合は一度の依頼で済むので、効率的な製造にもつながるでしょう。
まとめ
インバーの特徴やメリットとともに、インバーの3Dプリントのメリットや注意点を解説しました。
インバーは寸法精度が求められる部品や製品へのニーズが高まっており、今後も3Dプリントでの造形も拡大していくことが予想されます。
インバーの3Dプリントはまだ対応している業者が少ないため、技術や実績の高い業者を選び、依頼することが重要です。
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