
部品や製品製作を目的にPEIの加工を検討しているときには、切削加工も選択肢となります。
本記事では、「PEIはどんな製品製造に向いている素材なのか知りたい」「PEIの切削加工のメリットや注意点を知りたい」と考えている方のために、PEIの特性やメリット・デメリットとともに、PEIの活用シーンや切削加工のメリットを解説します。
PEIの切削加工を依頼する業者の選び方のポイントも紹介していますので、ぜひ参考にしてください。
Taigaで技術提案を受ける目次
PEI(ポリエーテルイミド)とは?
PEIとは、イミド結合とエーテル結合の両方を持っている非結晶性のプラスチック素材です。
琥珀色の独特な風合いを持ち、エンジニアリングプラスチックよりもさらに高い性能を持つ、スーパーエンジニアリングプラスチックのひとつです。
日用品などに使用されることは少ないものの、すぐれた特性を活かして工業製品や医療器具などの分野で活用されています。
PEIのメリット
PEIには、以下のメリットがあります。
- 連続使用温度170℃の耐熱性
- 耐薬品性が高い
- 機械的強度が高い
- 電気絶縁性が高い
- 赤外線透過率と高屈折率が高い
- 難燃性がある
- 寸法安定性が高い
- 成形性が高い
特筆すべきPEIのメリットとして、ガラス転移温度が217℃、連続使用温度が170℃と高温の下での使用が可能である点が挙げられます。
また、耐薬品性や機械的強度の高さ、電気絶縁性や難燃性などの特性から、厳しい環境下で使用される航空宇宙や航空機の部品などにも採用されています。
PEIのデメリット
PEIのデメリットは以下の通りです。
- PA(ビスフェノールA)を含む
- 衝撃に弱くノッチ感度が高い
- 耐薬品性、耐摩耗性に難点がある
- コストが高い
PEIはPAを含むことから、乳幼児関連製品への適用が制限されています。
また、衝撃に弱く、特に角部分は傷つきやすい性質があります。
PEIを含む非結晶性のプラスチック全般にいえることですが、耐薬品性、耐摩耗が低いのも難点です。
素材としても非常に高価なため、加工コストへの考慮も必要でしょう。
代表的なPEI素材の種類
以下では、主なPEIの種類をまとめました。
- 標準グレード:機械的強度に150℃以上の温度環境でも使用できる耐熱性にすぐれたPEI
- 強化グレード:ガラス繊維30%配合のPEI、ガラス繊維で強化することで、剛性とクリープ強度が高くなっている
- 高強度グレード:50 vol%のガラス繊維織布で強化したポリエーテルイミド(ウルテム樹脂)をベースにしたPEIコンポジット
グレードごとに特徴が異なるため、製造したい製品に合わせた素材選びが大切です。
PEIが用いられるシーン・製品例
PEIは、その特性を活かして以下のようなシーンや製品に活用されています。
活用分野 | シーンや製品例 |
通信関連 | 光通信用の光ファイバーコネクター光トランシーバモジュールの光コンポーネント無線周波数コネクターに使用される絶縁体基地局キャビティフィルタプラスチックキャビティフィルタ調整ネジアンテナ内部固定ネジリング移相器ブラケットミリ波レドーム内部の使用(発泡PEI) |
航空宇宙機材 | アバルブ燃料バルブ機内食用トレーハンドル機内内装座席フレーム収納棚 |
自動車 | コントロールバルブオイルポンプライトライダーフェンダーコンデンサーの高温誘電体フィルム(PEIフィルム) |
医療分野 | 人工呼吸器麻酔器滅菌トレイ手術ガイドピペット動物実験用ケージ |
日用品 | 家電製品電子レンジトレイメガネフレーム |
PEIの加工で切削加工を採用するメリット
PEIを用いて部品や製品を製造する際に、切削加工を選ぶメリットを解説します。
低コストで加工できる
切削加工は3D-CADのデータやプログラムがあれば加工が可能です。
鋳造や射出成形のように金型が必要ないため、金型の製作コストを抑えることができます。
試作品や少数製作なら、コストを抑えつつスピーディな加工が実現するでしょう。
PEIそのものが素材として高価のため、製造コストを少しでも抑えたいときにも向いています。
高精度な仕上がりを実現できる
PEIの切削加工は、データやプログラムをもとに機械によって行われます。
そのため、技術者のレベルに左右されにくく、精度の高い加工が実現できるでしょう。
使用する機器によっては、ミクロンレベルでの調整も可能です。
特に、PEIは航空機や自動車、宇宙分野といった寸法精度が求められる部品や製品の素材として多く活用されています。
切削加工なら、寸法や表面などの精度が求められるPEI製品でも、納得の仕上がりが実現できるでしょう。
形状の自由度が高い
切削加工は、機械が対応できる範囲なら素材の厚みの制限を受けません。
さらにデータやプログラムに沿って加工を進めるため、複雑な形状の加工も実現可能です。
通信関連部品など、細かく複雑な形状を持つ部品をPEIで製作したいときにも、切削加工は向いています。
PEIの切削加工における注意点
PEIはノッチ感度が高く、特に角部の切削時は応力集中に対して弱い特性を持っています。
欠けや割れが発生しやすくなるため、応力を分散させるためにコーナーにRを十分に設けるようにしましょう。
コーナーRを取るのが難しい場合には、切り込み量や送りの速度を少なくする工夫が必要です。
また、切削加工時にはバリが発生しやすく、素材が硬いため小さい穴や溝を作るときには注意が必要です。
PEIの切削加工を依頼する業者の選び方
PEIの切削加工を検討しているときには、依頼する業者によって仕上がりが左右されることがあります。
PEIの切削加工を依頼する業者を選ぶポイントを順に解説します。
PEIの切削加工実績や制作事例が豊富か
PEIの切削加工は割れや欠け、バリの発生などに留意しながら加工を進めなければいけません。
さらにPEI自体が非常に硬い素材のため、切削加工で使用する工具も適切なものを選ぶ必要があります。
そのため、PEIの切削加工での製品製作や事例を豊富に持っている業者を選びましょう。実績が豊富な業者なら、高い技術力を持っている可能性が高いです。
特に、高い寸法精度が求められるPEIの製品製作を検討しているときは、PEIの切削加工実績や事例を確認してから依頼してください。
他のスーパーエンプラ素材の切削加工にも対応しているか
PEI以外のスーパーエンジニアリングプラスチックの切削加工に対応している業者なら、PEIをはじめとしたスーパーエンプラ素材に対する知識も豊富にあります。
PEI以外の素材を使用した切削加工も検討できるので、製品製造の幅も広がるでしょう。
切削加工で対応可能な素材については、業者の公式サイトなどで紹介されていることが多いので、事前に確認してください。
加工費用や納期
切削加工は金型不要で製作できるため、コストや納期をかけずにPEIの製品製作を検討しているときにも選択肢となります。
ただし、実際の加工費用や納期は依頼する業者によって異なります。
候補となる依頼先が見つかったら、納期の確認や見積もりの請求などを通じて、必ず実際に発生する費用や納期についても確認するようにしましょう。
まとめ
PEIの素材としての概要やメリット・デメリットとともに、PEIの切削加工のメリット・デメリット、加工時の注意点について解説しました。
PEIは、航空宇宙分野をはじめとしたさまざまな分野の精密機器や部品に使用される素材です。
PEIの切削加工はメリットも多い一方でデメリットや注意点もあるため、技術力が高く実績が豊富にある業者へ依頼するようにしましょう。
PEIを活用した部品製造を検討している方は、ぜひ「Taiga(タイガ)」をご活用ください。
Taigaは、無料で経験豊富な業者に相談できるサービスです。
難易度の高い部品や新規部品の開発、少量生産、試作から量産まで、コストを抑えつつ効率的に進めることが可能です。
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