樹脂の切削加工とは？特徴やメリット、向いている樹脂素材などを解説

樹脂製品の製造において、切削加工を検討している方も多いでしょう。

しかし、「樹脂の切削加工は難しいと聞いたけど本当？」「切削加工で使われる樹脂材料は何？」など、加工に関する疑問を持つ方もいるはずです。

今回の記事では、樹脂の切削加工の概要や加工方法、使用する樹脂素材について解説します。

樹脂の切削加工とは

切削加工とは、プラスチックなどの樹脂製素材を材料に切削工具で切断・切削などの加工をする方法です。

金型に溶かした樹脂素材を入れ、冷やして成形する「射出成形」が大量生産に向いているのに対し、「切削加工」はひとつずつ材料を成形するため、少量生産に向いています。

樹脂を切削加工するメリット

樹脂を切削加工するメリットは、精度の高い製品を作れることです。

樹脂の切削加工では、コンピューターにより製品の寸法を数値制御しています。
そのため、複雑な形状の製品でも、高精度かつ安定した品質での加工が可能です。

また、樹脂の持つ特性を活かして、切削加工に溶接加工などを組み合わせれば、より複雑な形状のものも作れます。

樹脂の切削加工は難しい？

切削加工の中でも、樹脂の加工は難易度が高いといえます。
樹脂はほかの素材よりも熱伝導性が低く、熱による膨張や冷却後の変形などが出やすいためです。

加工時には、摩擦熱を考慮して工具が接触する面積を減らす、変形を踏まえて冷却後の寸法を考えるといった工夫が求められます。

樹脂の切削加工で用いられる加工方法

樹脂の切削加工で用いられる加工方法を順に解説します。

旋盤加工

旋盤加工とは、回転させている材料に工具を当てて加工する方法です。

ミクロン単位で加工できるため、高い精度が求められる製品や部品の加工に採用されています。

また、加工内容に合わせて工具を使い分けることで、以下のような加工も可能です。

• 外径削り
• 内径削り（穴繰り）
• 端面削り
• ねじ切り（めねじ）
• 面取り
• テーパ削り
• ドリル穴開け
• 溝切り・突っ切り加工

フライス加工

フライス加工とは、固定した材料に高速回転させた切削工具を押し当てて成形する加工方法です。

以下のような加工を得意としています。

• 平面加工
• 段差
• 溝
• 厚み引き
• エンドミル
• ドリル穴開け等の加工
• ねじ切り加工

切削加工で使われる主な樹脂素材3つ｜向いているのはどれ？

樹脂には大きく分けて以下の2種類があります。

• 熱可塑性樹脂（熱可塑性プラスチック）：熱を加えると柔らかくなり、冷却すると固化する
• 熱硬化性樹脂（熱硬化性プラスチック）：加熱すると硬化する

なお、樹脂の切削加工では熱可塑性樹脂が用いられるケースが多いです。

以下では、熱可塑性樹脂の代表的な素材を紹介します。

汎用プラスチック

汎用プラスチックとは、幅広い用途で使用される一般的な樹脂です。

主に、以下の素材が切削加工の材料として使われています。

• PP（ポリプロピレン）
• PE（ポリエチレン）
• PMMA（アクリル）
• PS（ポリスチレン）
• PVC（ポリ塩化ビニル）
• ABS樹脂など　

エンジニアリングプラスチック

エンジニアリングプラスチック（エンプラ）とは、高い機械的特性、耐熱性、耐化学性などを持つ樹脂です。

要求が厳しい工業用途で使用されるケースが多く、主な素材としては以下のようなものがあります。

• PA（ナイロン/ポリアミド）
• 6ナイロン
• 66ナイロン
• MCナイロン（MC901）
• POM（ポリアセタール）
• ジュラコン（ポリアセタールPOM）
• UHMWPE（超高分子量ポリエチレン）
• PC（ポリカーボネート）
• PET（ポリエチレンテレフタラート）
• PBT（ポリブチレンテレフタレート）
• PVDF （ポリフッ化ビニリデン）　 など

スーパーエンジニアリングプラスチック

スーパーエンジニアリングプラスチック（スーパーエンプラ）とは、エンジニアリングプラスチックよりも高い性能特性を持つ樹脂です。

主な素材としては、以下のようなものがあげられます。

• PTFE（テフロン）
• PEEK（ポリエーテルエーテルケトン）
• LCP（液晶ポリマー）
• PPS（ポリフェニレンスルファイド）
• PI（ポリイミド）
• PAI（ポリアミドイミド）

制作物によっては熱硬化性樹脂を使用するケースも

熱硬化性樹脂は熱可塑性樹脂よりも汎用性はないものの、熱耐性や強度が高いのが特徴です。

そのため、制作物によっては、以下の熱硬化性樹脂も切削加工の材料として使われます。

• フェノール樹脂
• エポキシ樹脂
• ウレタン樹脂

樹脂を切削加工する手順

ここからは、樹脂を切削加工する手順を解説します。

制作物から逆算してモデリングを行う

まず、試作品や加工データなどを参考に、製作したい加工物の情報に沿って製作方法を検討します。

製作に関する要件が決まっていない場合は、以下のポイントを押さえながらモデリングを行います。

• 加工物の設計
• 強度
• 性能　など

使用する樹脂素材や加工法を決める

モデリングや図面を元に、使用する樹脂素材や加工方法、サイズを決めます。

製作に入る前に、図面通りの製品を作るために以下を準備しておきましょう。

• 製作図
• 検査図
• QC工程表
• 検査成績表

加工機や工具、プログラムの準備

次に、加工内容に応じた加工機や切削工具を準備をします。

準備ができたら加工機に切削工具と材料をセットし、位置調整などの微調整を行いましょう。
なお、加工にNC旋盤やNCフライス、マシニングセンタを使用する場合には、プログラムの作成が必要です。

加工業者によってはプログラムのデータを管理してくれるので、再注文時にも同じ製品製造が可能です。

樹脂の切削加工を行う

加工機を使って樹脂の切削加工を行います。
樹脂は温度によって変形する性質を持っているため、温度管理を徹底しましょう。

また、切削加工中は定期的に検査を行います。

工程の途中で検査を行うことで、問題の早期発見や製品の品質確保につながります。

仕上げ加工を行う

加工後は、バリ取りやブラスト仕上げなどの仕上げ処理を行い、製品が完成します。

完成後は、製品や材料が品質基準を満たしているか確認するために、出荷検査を行いましょう。

出荷検査後、製品を以下から保護するための梱包を行って作業は終了です。

樹脂の切削加工で注意すべきこと

樹脂の切削加工で重要なのは、使用する樹脂素材の性質をしっかり把握しておくことです。

製品製造に適した樹脂を選んでも、切削加工には不向きであることもあります。
品質を担保するために二次処理が必要な素材を選んでしまうと、手間や納期、コストなどにも悪影響をおよぼしてしまうでしょう。

使用する樹脂素材を決める際は、自社の希望はもちろん、加工業者からの意見を求めることも大切です。

また、樹脂の切削加工には切削条件がとても重要です。

高品質の樹脂製品を切削加工で作るためには、以下の切削条件をしっかりと見極めましょう。

まとめ

樹脂の切削加工の概要やメリット、切削加工で用いられる方法や加工時の注意点について解説しました。

切削加工は高精度な加工ができる一方で、樹脂の性質をしっかり見極めた上で行う必要があります。
適切な材料の選定や徹底した温度管理など、高い技術力を持って加工を行える加工業者を選びましょう。

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