
3Dプリンターでの製作において、ゴム素材の使用を検討している方は少なくないのではないでしょうか?
しかし、実際には「どんな製品の製造に向いてる?」「メリット・デメリットは?」など、疑問をお持ちの方も多いはずです。
そこで本記事では、3Dプリント用ゴムフィラメントの特徴とメリット・デメリット、注意点などを詳しく解説します。
3Dプリント用ゴムフィラメントを適切に使用する方法を知りたい方は、ぜひ参考にしてください。
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3Dプリント用のゴムフィラメントとは?

3Dプリント用のゴムフィラメントとは、3Dプリントにおいて近年注目されているゴム素材のことです。
柔軟性や弾力性に優れており、TPU(熱可塑性ポリウレタン)やTPE(熱可塑性エラストマー)などの種類があります。その特性から、耐衝撃性や耐摩耗性が求められる靴底や防振パーツ、プロトタイプ部品などに活用されています。
耐久性や柔軟性が必要な場面で多く使われていますが、通常のフィラメントより技術的なハードルは高く、正しいプリント設定や取り扱いに関する知識が必要です。
3Dプリントに用いられるゴムの種類

3Dプリントに用いられるゴムの種類は、主に以下の3つです。
- TPU(熱可塑性ポリウレタン系)
- TPE(熱可塑性エラストマー系)
- TPC/PBAT(ポリエステル系)
それぞれ解説します。
TPU(熱可塑性ポリウレタン系)
TPU(熱可塑性ポリウレタン系)は、ゴムのような弾力性と耐久性をあわせ持つ素材です。
耐摩耗性や耐衝撃性が高く、靴底や防振パーツといった高い負荷がかかる製品に適しています。
柔軟性がありながらも形状を維持しやすいため、エスカレーター用のハンドレールなどにも利用されています。
一方で、プリント時には適切な温度管理が求められるため、プリント速度の調整に注意が必要です。
TPE(熱可塑性エラストマー系)
TPE(熱可塑性エラストマー系)は、柔軟性とゴムのような触感が特徴のフィラメントです。
主に、玩具や医療用部品、グリップなどの用途で使用されており、柔らかさが求められる場面に適しています。ただし、耐熱性が低いことから、高温環境では性能が低下する可能性があるため注意が必要です。
柔軟性のある素材であることから、初めてゴムフィラメントを使う方にも扱いやすい素材といえるでしょう。
TPC/PBAT(ポリエステル系)
TPCとPBAT(ポリエステル系)は、耐熱性が高く、環境への配慮が求められる用途で注目されている素材です。
耐薬品性にも優れているため、工業用部品や化学薬品に接触する製品に適しています。
また、PBATは食品包材や柔軟フィルムなどにも利用されています。
ただし、素材の強度自体は強くないため、製造前の強度チェックが非常に大切です。
3Dプリントにゴムを使用するメリット
3Dプリントにゴムを使用するメリットは以下の3つです。
- 高い耐久性と弾性がある
- 柔軟性が高く、幅広いシーンに適している
- 衝撃に強く、振動吸収に優れている
それぞれ解説します。
高い耐久性と弾性がある
ゴムフィラメントは、耐久性と弾性が高い特徴を持つ素材です。
耐久性とは、強い衝撃や圧力が加わった際に破損しにくい性質を指し、弾性は変形した後に元の形状に戻る力を意味します。
また、ゴムフィラメントは摩耗や引っ張りへの耐性が高く、長期間にわたって安定した性能を発揮します。
そのため、靴底や防振パーツなど、繰り返し使用される製品にも適しており、強度と柔軟性が求められる部品の製造も可能です。
柔軟性が高く、幅広いシーンに適している
ゴムフィラメントは、柔軟性が高く幅広いシーンに適している素材です。
衝撃吸収性が高く、振動緩和効果が期待できることから、自動車部品やスポーツ用品、靴底材など、負荷がかかる環境で多く使用されています。
柔軟性を必要とする製品において、優れた選択肢といえるでしょう。
衝撃に強く、振動吸収に優れている
ゴムフィラメントで作られた造形物は、衝撃に強く振動吸収に優れています。
特に、TPUやTPEなどの素材は衝撃が加わった際に変形して衝撃を吸収することで、破損を防ぐことができます。
また、衝撃だけでなく振動吸収にも優れているため、スマートフォンのケースや防振機能を持つ部品など、外部からの衝撃を受ける製品に使用されることが多いです。
3Dプリントにゴムを使用するデメリット
3Dプリントにゴムを使用するデメリットは以下の3つです。
- プリントに高い技術が必要
- 高い精度が求められる造形には向かない
- 一般的なフィラメントと比べて材料費が高い
それぞれ解説します。
プリントに高い技術が必要
ゴムフィラメントの3Dプリントには、高い技術が必要です。
ゴム素材は、一般的なフィラメントと比べてノズルが詰まりやすく、造形中にフィラメントが変形することもあります。
また、熱の影響を受けやすい特性があるため、冷却を適切に行わなければなりません。
そのため、ゴムフィラメントを使用する際は、温度や印刷速度の調整が不可欠です。
初心者には難易度が高い場合もあるため、3Dプリントを依頼する際はゴムフィラメントを用いた造形の実績があるかどうかをよく確認しましょう。
高い精度が求められる造形には向かない
ゴムフィラメントは柔らかい特性から、レイヤー間(3Dプリンターで物を作る際に重ねる薄い層)の接着が不完全になりやすい素材です。
そのため、高い精度が求められる造形には向いていません。
また、ゴムフィラメントの柔らかい性質は、印刷中の振動や機械の動きによる影響を受けやすいという課題もあります。例えば、細かいデザインや複雑なパーツを作る際、エッジがぼやけるほか、表面が滑らかにならないといった問題が発生することがあります。
精度を保つには、品質の高いフィラメントを選ぶほか、プリンターの設定を慎重に調整することが必要です。
一般的なフィラメントと比べて材料費が高い
ゴムフィラメントは、価格が一般的なフィラメントよりも高い傾向があることから、コスト面での負担が大きいといえるでしょう。
使用時には、必要な量を見極めて無駄を減らす工夫が求められます。
ゴムの3Dプリントが向いているシーン

下記の表は、ゴムの3Dプリントが向いているシーンとその理由をまとめたものです。3Dプリントにゴムフィラメントの使用を検討している方は、ぜひ参考にしてみてください。
ゴムの3Dプリントが向いているシーン | 理由 |
スマホケース | 衝撃を吸収する素材で、落下時に衝撃を吸収する効果がある |
靴のソール | クッション性と耐久性に優れている |
医療器具 | 患者に合ったオーダーメイドの器具を製造できる |
ゴムを用いた3Dプリントで注意すべき点
ゴムを用いた3Dプリントで注意すべき点は、以下の3つです。
- ゴムフィラメント専用のノズルを使用する
- 適切な温度を設定する
- 造形速度を遅めに設定する
それぞれ解説します。
ゴムフィラメント専用のノズルを使用する
ゴムフィラメントは柔軟性と弾力性が高いため、ノズル詰まりを起こしやすい傾向にあります。
そのため、専用のノズルを使用することが推奨されています。
また、ノズル径を大きめに設定し、柔らかい素材がスムーズに通過できる状態を作ることが大切です。
そのほか、定期的にノズルのメンテナンスを行うことで、詰まりのリスクを軽減できるでしょう。
適切な温度を設定する
ゴムフィラメントを使用する際は、プリンターの温度設定を適切に調整しましょう。
ゴムフィラメントは高い粘性を持つため、温度が低すぎるとノズル詰まりを引き起こす可能性があります。
逆に、温度が高すぎる場合はフィラメントが溶け、造形物の形状が崩れることがあります。
メーカーの推奨温度を参考に設定し、必要に応じて微調整を行うことが重要です。
造形速度を遅めに設定する
ゴムフィラメントは高い粘性を持つため、造形速度が速すぎるとノズル詰まりや形状の乱れを引き起こしやすいといえます。
造形速度を遅く設定することで、フィラメントが均一に押し出され、安定した造形が可能です。
また、造形速度を遅めにすることで製品の精度が向上することも期待できます。
まとめ
3Dプリント用のゴムフィラメントは、柔軟性や弾力性に優れた特性を持ち、靴底や防振パーツ、プロトタイプの部品製作など、さまざまな用途で活用されています。
一方で、造形には高度な技術や設定が必要であるため、事前準備や素材自体の特性を理解することが重要といえます。ゴム素材を用いて精度の高い造形を実現するためには、自社のニーズに合った専門業者を選ぶことが不可欠です。
適切な業者選びによって、期待通りの仕上がりを得ることができるでしょう。
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