
CFRPには、使用する樹脂の種類によって、熱硬化性CFRPと熱可塑性CFRPの2種類があります。従来は熱硬化性CFRPが主流でしたが、近年ではリサイクル性や成形性の高さから、熱可塑性CFRPへの注目が高まっています。
しかし、熱可塑性CFRPについて詳しく理解している方はまだ少ないのではないでしょうか?「熱可塑性CFRPとは一体どんな材料なのか?」「熱硬化性CFRPと何が違うのか?」「どのような用途に活用されているのか?」など、疑問をお持ちの方もいるかもしれません。
そこでこの記事では、熱可塑性CFRPについて、上記のような内容をわかりやすく解説していきます。
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熱可塑性CFRPとは?
熱可塑性CFRPとは、炭素繊維強化プラスチック(CFRP)の一種で、炭素繊維を熱可塑性樹脂で固めた複合材料です。
熱可塑性CFRPは、加熱すると柔らかくなり、冷却すると再び硬化する特性を持っています。この特性により、成形や再加工が簡単になり、複雑な形状の部品を製造できます。
CFRP(炭素繊維強化熱可塑性樹脂)とはそもそも何?
CFRP(炭素繊維強化熱可塑性樹脂)とは、炭素繊維を補強材として用い、熱可塑性樹脂をマトリックス(母材)とする複合材料のことです。
CFRPは、一般的には熱硬化性樹脂(エポキシ樹脂など)が使われることが多いですが、熱可塑性樹脂を使用することで、成形性やリサイクル性に優れた材料になります。
そのため、新たな特長を持つ次世代の材料としてさまざまな分野で注目されています。
熱可塑性CFRPと熱硬化性CFRPの違い
熱可塑性CFRPと熱硬化性CFRPの特徴の違いについて表にまとめています。
熱可塑性CFRP | 熱硬化性CFRP | |
成形方法 | 加熱すると柔らかくなり、冷却すると固まる | 一度硬化すると再加熱しても柔らかくならない |
リサイクル性 | リサイクルが簡単 | リサイクルが難しい |
保存条件 | 常温保存が可能 | 冷凍保存が必要な場合がある |
成形時間 | 短時間(数秒~数分) | 長時間(数十分~数時間) |
これらの特徴を見ると、熱硬化性CFRPよりも熱可塑性CFRPの方が環境にも優しく、大量生産品にも向いている可能性が高いと言えます。
以下で熱可塑性CFRPの特徴について詳しく解説していきます。
熱可塑性CFRPの特徴
熱可塑性CFRPの特徴は以下の4つです。
- 耐衝撃性が高い
- 製造コストが低い
- 成形性が高い
- リサイクルが可能
耐衝撃性が高い

熱可塑性CFRPは、熱硬化性CFRPと比較して優れた耐衝撃性を持っています。
熱可塑性CFRPの衝撃性が高い理由は、熱可塑性樹脂の分子が比較的自由に動ける構造を持っているからです。この柔軟性により、衝撃を受けた際にエネルギーを吸収しやすく、亀裂や破壊を防げます。
その優れた耐衝撃性から、熱硬化性CFRP では耐衝撃性に課題のあった、大型旅客機の主翼前縁やジェットエンジンの吸気ダクトなどの部位に採用されています。
製造コストが低い
製造コストが低いことも、熱可塑性CFRPの特徴の一つです。
熱可塑性CFRPは、加熱すると柔らかくなり、冷却すると硬くなる性質を持っているため、成形プロセスが非常に短くなります。そのため、熱可塑性CFRPと熱硬化性CFRPでは製造時間に大きな差があります。
熱硬化性CFRPは、成形に通常数時間から数十時間を要する一方で、熱可塑性CFRPは、成形時間が非常に短く、数十秒から数分で完了させることが可能です。
最新の技術では、熱可塑性CFRPの成形を約1分で行えることが報告されています。
成形性が高い
熱可塑性CFRPは、柔軟性や溶融特性に優れるため、さまざまな成形方法が可能です。
例えば、熱硬化性CFRPを加熱してプレス機で特定の形状にする「加熱プレス成形」や熱可塑性樹脂と炭素繊維を混ぜ合わせながら押出機で成形する「複合押出成形」などの技術が開発されています。
これらの成形方法は、複雑な形状や精密な部品の製造にも対応可能で、幅広い用途に活用されています。
リサイクルが可能
リサイクルできることも、熱可塑性CFRPの特徴の一つです。
熱可塑性CFRPは、廃材を粉砕して再度成形したり、溶融して樹脂と繊維を分離したりすることで再利用できます。
一方、熱硬化性CFRPは一度硬化すると再溶融ができない特徴を持っているため、リサイクルが難しく、分離や再利用には高い技術が必要です。
リサイクル性の特徴を持った熱可塑性CFRPは、次世代の持続可能な素材として注目されています。
熱可塑性CFRPの使用用途
熱可塑性CFRPは、上記のとおり優れた特徴を持っているため、さまざまな産業分野で注目されており、自動車部品や航空機、スポーツ用品、医療機器など、幅広い分野で活用されています。
ここでは、熱可塑性CFRPが具体的にどのような分野で使用されているのかを詳しく解説します。
- 航空機
- 自動車
- 産業機器
航空機

熱可塑性CFRPは航空機のさまざまな部分で利用されています。
例えば、大型旅客機の翼部分やジェットエンジンの吸気ダクト、航空機のブラケットなどの構造材として使われています。
熱可塑性CFRPの持つ、軽量で高強度な特性を活かすことで、燃費を向上させることや航続距離を延長させることが可能です。
また、高い成形性を持つ熱可塑性CFRPは、座席フレームやキャビンパネルといった部品にも使用され、軽量化と耐久性の向上を実現しています。
自動車
熱可塑性CFRPは自動車産業にも大きな影響を及ぼしています。
総合化学メーカーの帝人は、2011年に炭素繊維複合材料(CFRP)を1分以内で成形する量産技術を確立したと発表し、2018年には帝人が開発した熱可塑性CFRPを使用した、量産車が世界で初めて発売されました。
熱可塑性CFRPは、成形後の再加工が容易な点やリサイクル性にも優れているため、製造コストの削減や環境負荷の低減が期待されています。
特に、EVのバッテリーケースや車体部品において、熱可塑性CFRPの利用が進んでいます。
産業機器

熱可塑性CFRPは、エネルギー機器や建材土木産業などの分野でも注目されています。その多くは、メンテナンスコストの削減や環境負荷を低減させることが目的です。
エネルギー機器では、軽量化や発電効率の向上が期待され、特に風力発電のブレードに使用されています。また、建材土木産業では、熱可塑性CFRPが耐震補強材や構造材として使用されています。
まとめ
この記事では、熱可塑性CFRPの特徴や使用用途について詳しく解説してきました。
熱可塑性CFRPを使用することで、製造コストの削減や環境負荷の低減が期待できるため、製造業や建設業、エネルギー産業で注目されています。
熱可塑性CFRPは、効率的で高品質な生産を実現し、現代の産業を支える重要な役割を果たしており、今後もさらなる発展が期待されています。
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