
環境に優しい塗装技術として注目を集めている粉体塗装。従来の溶剤塗装(液体塗装)と比較しても、非常に多くのメリットを持つことから、様々な分野で導入されています。
この記事を見ている方の中にも、粉体塗装について興味を持っている方がたくさんいるでしょう。
そこで今回は、粉体塗装とは何か、メリットやデメリットは何かということについて詳しく解説していきます。
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粉体塗装とは?

粉体塗装とは、粉末状に砕いた塗料を塗布する方法のことです。別名「パウダーコーティング」とも呼ばれています。
粉末状にした塗料を対象物に付着させ、高温で溶かしてから乾燥させるのが特徴です。
粉体塗料には、エポキシやポリエステルなどの熱硬化性のものと、ポリエチレンやナイロンをはじめとする熱可塑性のものがあります。どちらも塗膜を厚くできるという特徴を持っており、サビを防止するのに役立ちます。
粉体塗装のメリット
粉体塗装のメリットは、以下の通りです。
- 一度塗りでも厚い塗膜を形成できる
- 人体や環境に優しい
- 耐久性や防錆性が高い
- 溶剤塗装に比べてコスパが良い
それぞれについて、詳しく見ていきましょう。
一度塗りでも厚い塗膜を形成できる
粉体塗装に使われる塗料は、溶剤塗料に比べて粒子が大きいです。そのため、エッジを含む対象物表面への付着率が良く、一度塗りでも厚い塗膜を形成できます。
また、耐食性にも優れており、溶剤塗装に比べてサビや剥がれが起こりにくいため、塗り替え頻度も少なく済みます。
人体や環境に優しい
人体や環境に優しいことも、粉体塗装のメリットです。粉体塗料には、環境汚染の原因となるVOC(揮発性有機化合物)や溶剤が含まれていないため、シックハウス症候群をはじめとする様々なリスクを軽減できます。
また、引火リスクが低く、CO2の排出量も少ないため、人体にも環境にも優しいエコ塗装といえるのです。
耐久性や防錆性が高い

塗料を加熱して乾燥および硬化させる粉体塗装は、塗膜を厚くするだけでなく、耐久性も強化してくれます。
具体的には、
- 耐衝撃性
- 耐熱性
- 耐薬品性
- 耐食性
- 防錆性
などの向上に期待できるため、製品を長持ちさせやすくなるのです。
溶剤塗装に比べてコスパが良い
粉末状の塗料は、液状の塗料に比べて付着効率が高いといわれています。付着効率が高いということは、少ない塗料で広範囲に塗膜を形成できるということです。
また、粉体塗料には溶媒が含まれていないため、塗料の回収および再利用が可能です。
これにより、コストの削減や環境負荷の低減に繋げやすくなります。
粉体塗装のデメリット
そんな粉体塗装には、以下のようなデメリットもあります。
- 薄い塗膜の形成が難しい
- 専用設備のある工場でしか施工ができない
それぞれについて、詳しく見ていきましょう。
薄い塗膜の形成が難しい
粉体塗装は、厚い塗膜の形成を得意とする塗装方法です。そのため、薄い塗膜の形成が若干難しくなります。
厳密にいえば、塗膜を薄くすることは可能なのですが、一定以上細かくすると静電反発が起こり、効率や生産性が低下する可能性があります。特に、30ミクロンを下回るような塗膜の形成は困難を極めますので、注意してください。
薄い塗膜の形成を想定している場合は、粉体塗装ではなく、溶剤塗装を行うのがおすすめです。
専用設備のある工場でしか施工ができない
粉体塗装は、静電気や熱の力を借りて乾燥や硬化を行います。そのためには、大型の熱風式乾燥炉やスプレーガンなどが必要です。したがって、これらの設備がない塗装業者や現場などでの施工は不可能となります。
粉体塗装の設備が自社に揃っていない場合、外部の業者に依頼することになりますので、スムーズに施工を行うためにも、信頼できる業者を探しておきましょう。
粉体塗装の種類

粉体塗装には、大きく分けると以下2つの種類があります。
- 静電粉体塗装法
- 流動浸漬塗装法
それぞれについて、詳しく見ていきましょう。
静電粉体塗装法
静電粉体塗装法とは、静電気の力を使って塗装する方法のことです。対象物をアースに繋げてプラスに帯電させ、スプレーガンを使ってマイナスに帯電した粉体塗料を噴射します。
この塗装法では、熱硬化性粉体塗料を使用しつつ、以下の工程で施工をするのが一般的です。
【静電粉体塗装法の施工手順】
- 前処理
- 水切り乾燥
- 粉体塗装
- 焼付乾燥
- 冷却
静電粉体塗装法は、対象物の形状やサイズに対する制限がほとんどなく、均一な膜厚を得やすいという特徴があります。
ただし、電気を通さない素材には塗装ができませんので注意してください。
流動浸漬塗装法
流動浸漬法とは、対象物を加熱し、粉体塗料を圧縮空気によって流動させた流動浸漬槽という容器に入れて塗装する方法です。簡単にいえば、塗料を熱で溶かして付着させるやり方となります。
この塗装法は、熱可塑性粉体塗料を使用しつつ、以下の工程で施工をするのが一般的です。
【流動浸漬塗装法の施工手順】
- 前処理
- 予備加熱
- 流動浸漬
- 後加熱
- 冷却
流動浸漬塗装法は、膜厚塗装が容易であり、粉体塗料の回収装置が不要という特徴を持っています。また、電気を通さない素材にも塗装可能です。
ただし、流動浸漬槽のサイズ以下のものでなければ塗装ができませんので注意してください。
粉体塗装のよくあるトラブルと対策
粉体塗装では、たびたび以下のようなトラブルが起こります。
- 粉体塗装が剥がれる
- 表面にサビが発生する
- 塗膜表面が波打つ
粉体塗装が剥がれてしまう原因としては、
- 前処理不足
- 素材と塗料の相性が悪い
- 焼付条件が適切ではない
といったことが考えられます。
このようなトラブルを防ぐためには、前処理を丁寧に行い、素材に合った塗料を選定し、正しい条件で焼付を行うことが大切です。
表面にサビが発生する原因としては、
- 素地の調整不足
- 油汚れや水分の付着
- 塗料の防錆性能が低い
- 塗膜が薄い
- 湿度が高い
といったことが考えられます。
このようなトラブルを防ぐためには、研磨等で対象物の表面を調整したり、衛生管理を見直したり、塗膜を厚くしたりといった対策を行うことが大切です。
塗膜表面が波打つ原因としては、
- 膜厚の不足or過剰
- 電圧が高すぎる
- 長時間放置
- 温度が高すぎる
といったことが考えられます。
このようなトラブルを防ぐには、適切な膜厚や電圧に調整することが大切です。
粉体塗料の代表的な種類
粉体塗装に用いる塗料には、大きく分けると以下2つの種類があります。
- 熱硬化性粉体塗料
- 熱可塑性粉体塗料
それぞれについて、詳しく見ていきましょう。
熱硬化性粉体塗料
熱硬化性粉体塗料とは、加熱によって化学反応が促進され、不可逆的に硬化するという特徴を持った塗料です。
この塗料は、一度硬化すると溶け出すことがないため、
- 耐久性
- 耐薬品性
- 耐熱性
を持った塗膜を形成できます。
代表的な種類は、以下の通りです。
- エポキシ系
- エポキシポリエステル系
- ポリエステル系
- アクリル系
- フッ素系
樹脂系ごとに用途や条件が異なりますので、対象物や特徴を考慮した上で最適な塗料を選びましょう。
熱可塑性粉体塗料
熱可塑性粉体塗料とは、加熱によって軟化し、冷却によって硬化するという特徴を持った塗料です。可逆的なプロセスとなるため、加熱と冷却を繰り返し行うことができます。
代表的な種類は、以下の通りです。
- 塩化ビニル系
- ポリエチレン系
- ナイロン系
中でも、塩化ビニル系やナイロン系は、耐食性や対候性に優れていることから、道路資材として使われることが多いです。
粉体塗装に必要な機材とは?
先ほども解説したように、粉体塗装には専用の設備や道具が必要です。
以下、最低限必要な機材について詳しく見ていきましょう。
パウダーブース
パウダーブースとは、設備内への異物混入を防ぐためのブースです。これは、塗膜の付着効率を高める上で欠かせない設備といえます。
また、正常な空気を取り込んだり、塗料を回収したりといったことにも役立ちます。
パウダースプレーガン
パウダースプレーガンとは、粉体塗料を対象物に噴射するための機械です。多くの場合は、静電ガンタイプが使用されます。
【静電ガンの構成要素】
- 静電ガン
- コントローラー
- 塗料タンク
- 塗料供給装置
フィードセンター
フィードセンターとは、粉体塗装の制御システムのことです。この制御システムがあるおかげで、稼働中の粉体の封じ込めや、高度な色の変更が可能となります。
このようなことから、フィードセンターはクリーンで安全、それでいて生産的な環境を実現するために欠かせない設備といえるのです。
ポンプ
ポンプは、塗料タンクから粉末を引き出し、粉末流を霧状にしてスプレーガンに移すための装置です。この装置は、効率的かつ正確な塗装を行うための重要な役割を担います。
そのため、精度の高い製品を使用しなければなりません。
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粉体塗装は、溶剤塗装に比べて環境に優しく、施工においても多くのメリットがあります。
しかし、専用の設備や機材がなければ施工ができないため、自社に設備が整っていない場合は外注を検討しなければなりません。粉体塗装には高度な技術が必要ですので、外注をする場合は、依頼する業者を慎重に選ぶことが大切です。
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まとめ
粉末状に砕いた塗料を塗布する粉体塗装は、溶剤塗装に比べて環境に優しく、コストや仕上がりの面でも多くのメリットを得られます。また、適切な塗料を選ぶことによって、様々な対象物への塗装が可能となるため、現在では多くの業界で注目されています。
しかし、粉体塗装には専用の設備や高度な知識、それから技術が必要です。自社で施工ができない場合は、実績が豊富な業者に外注するのがおすすめです。とはいえ、粉体塗装の外注先選びはそう簡単ではなく、時間がかかってしまうこともあります。
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